【1曲を徹底解説】フジヤマディスコ/SILENT SIRENのベースラインをあいにゃん(山内あいな)さんから直接教えていただきました。

もし、その曲を演奏しているプロベーシスト本人から解説してもらうことができたら……そんな夢のような体験をしてきました。

今回は、そのイベントレポート及び学んだことを元に曲解説をしていきます。

 

こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!

この記事では、SILENT SIRENの山内あいなさん(通称:あいにゃん)による「フジヤマディスコ」の演奏解説で聞いたことをレポートいたします。

【Click!】参加したイベント「ベースの学校」とは?
今回は、音楽業界における最大手リットーミュージックのベース・マガジンが主催するイベント「ベースの学校」というイベントに参加してきました。

11月11日の「ベースの日」にちなんだイベント

11月11日であることは、ベーシストであれば、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?余談ですが、Twitter上では「5弦や6弦を使う多弦ベーシストは祝うな!」とか「令和元年の11月11日は5弦の日だ」とかも含めてものすごく盛り上がっていました。2019年はその11月11日までの11月4日からの週を“Bassist‘s Week”と位置づけ、超限定人数だけに送るトーク&奏法セミナー『BASSMAGAZINE Presents ベースの学校〜THE BASS LINES〜』が開催されました。

1日にひとりのプロベーシストが自曲を1曲まるっと解説!

このイベントでは、1日にひとりずつベーシストをお招きして課題曲を設定、ベース・プレイヤーが知りたかった“あの曲のあのベース・ライン”をこと細かに解説。イントロからエンディングまで、1曲のなかで展開されるフレーズやコピーする際のポイント、そのベース・ラインが生まれた背景などが聴けました。ファシリテーターの近藤隆久さん(元ベースマガジン編集長。現ベースマガジン・プロデューサー)がプレイヤー視点で出演ベーシストの方に聞きまくりながら90分間ノンストップで1曲をまるっと解説してもらいます。

参加者もベースを持っていき(流石に生音ですが…)その場でベチベチやりながら先生の話を聞く。というスタイル。総勢30〜40人が集まって、熱心に学びました。

11月7日のSILENT SIRENの山内あいなさんの回に参加

私は、THE BACK HORNのベーシストの岡峰光舟さんの回とSILENT SIRENの山内あいな(あいにゃん)さんの回に参加しました!

あいにゃんさんは私と同世代(1988年生まれ)のベーシスト。接点は全くありませんが、聞いていた音楽や、学生の頃にコピーしていた曲などが被るんですよね。(あいにゃんの好きなバンドはACIDMAN、RADWIMPS、チャットモンチー、椎名林檎、GO!GO!7188、などだそうです。)邦楽ロック的なルーツが自分と近くて勝手に親近感を覚えています。(笑)

きっとファンには怒られてしまうのでしょうが、正直に話すとSILENT SIRENの最初(彼女たちのサウンドを聞く前)の印象は「モデルがやっているバンド」程度でした。しかし、実際に演奏を聞いたり、ベース・マガジンのあいにゃんのインタビューを読んだりしているうちに、音楽と本気で向き合っていることを知り、次第にファンになっていきました。正直、可愛くてベースもバッチリ弾けるとか最強だろ!?

そんな憧れのベースプレイヤーに直接習える機会なので、もう二度とないかもしれない!と思い、チケット販売開始と同時に申し込み!

あいにゃんの回は、ベーシスト以外のファンも集まり即満員になりましたが、ちゃんとチケットをゲットして2列目の席をゲットしました。

※タペは2日間とも着物で参加しています。(岡峰光舟さんのときは黄色、あいにゃんさんのときは赤色の着物です。見つけられるかな?)

ちなみにあいにゃん先生は、この日のために夜なべしてテキストを作ってくれました。

ちなみのちなみにあいにゃん先生は2019年12月に絵本作家デビュー

さて、感動のおすそ分けはこれくらいにして、真面目な演奏解説のシェア行きましょう!

目次

演奏解説SILENT SIREN「フジヤマディスコ」

今回、あいにゃんに解説していただいたのはSILENT SIRENの「フジヤマディスコ」です。

※この動画は、11月11日「ベースの日」に記念として(教えていただいたお礼として)投稿した演奏動画です。参加したときと同じ着物で撮影しました。

あいにゃんさんから教えていただいたことを反映したTAB譜はPiascoreで販売しています。

ここからはあいにゃんさんから教えていただいたポイントにタペ独自の解釈や説明を補足して説明していきます!

解説には上記の動画の秒数を記載していきますので、ぜひ動画を確認しながら読んでみてくださいね!

レーベル移籍後心機一転の記念すべき曲

まず、この曲は2017年に発売されたシングルです。EMI Recordsへ移籍し「Silent Siren」が「SILENT SIREN」に変わったときの第一弾シングルとしてリリースされました。より高みを目指していくという意気込みと、ライブでぶち上がるダンサブルさを兼ね備えたライブ定番曲として定着している曲です。

ちなみに、このベースの日の課題曲をあいにゃんがどの曲を解説して欲しいかTwitterでアンケートを取ったところ、ダントツ人気が「フジヤマディスコ」だったようです。

※ここからはSILENT SIRENを「サイサイ」と表記していきます。

この曲は「スラップ」中心の曲

この曲はなんと言っても、ギターのカッティングに続いて入ってくるベースの「スラップ」フレーズ。(00:15~)

※スラップとは弦を叩いたり引っ張ったりして音を出す奏法です。

このスラップを攻略できると、この曲はほぼできたようなものです。実際にサイサイの曲の中でも最もスラップが多く登場する曲です。

あいにゃんのスラップはシンプルかつかっこいいので、何度も練習してものにしたいですね。

00:15~ 【イントロ】この曲の核となる「スラップ」フレーズ

このフレーズをマスターすれば、この曲の核を掴んだようなものです。

ちなみに、本人曰く、ライブ時には一部簡単にして演奏しているそうです。(私の動画はライブ版の簡単バージョン。原曲と聴き比べてみてください。)

その理由は、ミュートが難しいため。ミュートがうまくできないと、余計な音がたくさん出てしまい音が濁ってしまいます。大音量で演奏しているときは特にミュートしていないときの雑音は目立ちます。

あいにゃんのスラップスタイルは「垂直型」スラップ

スラップの形には

  • 親指が上向きになる「並行」スタイル
  • 親指が下を向く「垂直」スタイル

の2種類があります。

私のスラップスタイルは「親指が上を向くスタイル」です。上を向くと表現したりしますが、厳密には元に対して平行に向いています。

このスタイルの特徴は、ストラップが短い場合や座っているときに弾きやすい、というメリットがあります。

また個人的には、平行スタイルの方が、弦に親指をピンポイントで当てやすいです。

ただし、指弾きへの切り替えが瞬時に行えないというデメリットがあります。

 

一方であいにゃんの「並行」スタイルは、ストラップ長めの低く構える人が弾きやすいスタイルです。

あいにゃんが解説していて「なるほど!」と感じたメリットが、「指弾きへの切り替えのしやすさ」ですね。

指弾き時と手の位置が変わらないので、切り替えが瞬時に行えるのですね。

ただし、私が感じている垂直型のデメリットは「狙いたい弦をピンポイントに当てにくい」ということが考えられます。

 

スラップスタイルについては動画で詳しく解説しています!

スラップスタイルとフジヤマディスコの音作りについてはこちらを御覧ください!

 

スラップは「弦を叩く」ではなく「弦を振動させる」意識を持つ。

スラップはどうしても叩くように演奏することから、親指を叩きつけてしまう人がいますが、実際のイメージは違います。

扇子を仰ぐように腕の回転を使って、瞬間的に弦に指を当てて「弦を振動させる」ということが大事。

スラップはいかに「ミュートできるか?」が大事。

正直最初のうちは、ちゃんと鳴らせることがまず大変だと思います。腕の回転を使って、「鳴らしたい弦を綺麗に振動させる」というのは結構難しいです。

ただ、スラップで音に慣らすことに慣れてきたら、ぜひ「ミュート」も意識してみてください。

私も動画内での演奏で、スラップ時は、左手の親指を使って4弦押さえたり、使っていない左手の指で弦に触れたり、右手を触れて押さえたり、その時の状況に合わせて、いろいろ駆使しています。

スラップは「リズム」が命

スラップは、弦を叩いたり引っ張ったりして音を出す奏法です。かなりパーカッシブ、つまり「打楽器的な演奏」といえます。そのため打点のズレが非常に目立つ奏法なので、「リズム感」がとても大事になってきます。

あいにゃん曰く「体のどこかリズムが取りやすいところでしっかりとリズムを取りながら演奏する」というのがポイントです。

※ちなみに動画の私は「首」か「左足」でリズムをとっていますね。

音作りは「SANSAMP(サンズアンプ)」で

ものスラップ部分の音色は「サンズアンプ」というプリアンプを使って歪ませています。普通の指弾きをしている部分とは奏法による音色の変化だけでなく、エフェクターによる音の変化も感じてみてください。(動画でも足元でオンオフ切り替えています。)

あいにゃんは他の曲でも「スラップ時にはサンズを踏む」というのが鉄板のパターンのようです。

チェリボムの解説記事も参考にしてみてください。

【スラップ解説】チェリボム/SILENT SIREN|ベース奏法徹底分析!

コンプで音を整えよう!

スラップ時なんかは特に、音量のばらつきがどうしても出てしまいます。

  • 音の粒を揃える
  • 張りのある音色を作る

というような音作りに欠かせないのが「コンプレッサー」です。

ベーシストの音作りにはコンプレッサーは欠かせません。

あいにゃんが使っているものと違いますが、こちらのコンプレッサーはかなり詳細な音作りが行えるのでおすすめです。

00:23~ 【イントロ】曲中何度も出てくる「トゥクトゥトゥーン」グリスダウン

「フ・ジ・ヤ・マ・ディ・ス・コ」という掛け声とともに出てくる、ベースの「トゥクトゥトゥーン」というグリスダウン。これは単純に弦を高い方から低い方にグリスダウンしているだけではなく、全弦ミュートして1弦側から4弦側に向けて弦を弾いていき、4弦だけはしっかりと弦を押さえてグリスダウンをします。

00:44~ 【Aメロ】ライブでは「逆輸入フレーズ」を採用

最初のAメロは基本的には8分音符でルート弾きなのですが、ルートがBからB♯に動くところは5度とオクターブ上を行き来するフレーズになっています。このフレーズはスライドを使って粘っこく行うのがポイント!

これは本人曰く「とあるフジヤマディスコ弾いてみた動画をみてかっこよかったから採用した」というまさかの逆輸入フレーズ!

そういうこともサラッと話してしまうところが、なんとも等身大で常に成長中のプレイヤーなんだということを感じさせてくれますね。

サイサイは2019年で結成10年。相当な場数を経験しているので、とても安定した演奏をしていますが、常に成長しているというのはとても尊敬できる姿勢ですね!

※逆輸入フレーズも5つのテクニックの動画内で解説しています。

00:52~  【A’メロ】1、2弦はプルを多用

ここもスラップフレーズですが、トリル(ハンマリング・オン&プリング・オフ)がないのでイントロよりは簡単なフレーズです。

そしてこのフレーズは、1、2弦は全てプルで演奏しています。本人曰く、「1、2弦はサムが鳴りにくい。ライブだと抜けが悪くなるので、音抜けのいいプルを使うようにしている」とのこと。

プル3連続のフレーズなので、プルのいい練習になりますね。

00:57~  【A’メロ】半音移動「ドゥペッペ」スラップ

難易度が高めの16分音符裏スラップです。「ドゥペッペ」というようなフレーズですが、これは2弦3フレット人差し指→3弦人差し指フレットポジションで行います。それは、またC♯(3弦4フレット)に戻ってくるので、そこにスムーズに戻れるようにこのポジションでおこないます。

01:23~  【Cサビ】オクターブフレーズの開放弦もミュートする

サイサイの曲でも多く、ダンサブルな曲に必ずついてまわる「オクターブフレーズ」

基本的には、左手は、低い方の音を人差し指、高い方の音を薬指か小指で行います。そして、一方の音を鳴らしているときは、もう一方の指を浮かせて、音を切る(ミュート)するようにしています。

4弦開放弦の場合は、0フレットなので、指を浮かせてミュートすることができないので、2弦の方を薬指で押さえると同時に、余っている中指などで4弦に触れるようにします。

03:14~ 【ブレイク】とにかくリズムキープを意識する。

ベースだけになる箇所。あいにゃんは最初の頃プレッシャーを感じすぎて、棒立ちで演奏してしまい、逆にリズムを感じられずにめちゃくちゃになってしまったこともあるとか。

C♯のフレーズですが、高い3度の音を使う関係で、4弦ルート(9フレットポジション)を使って行います。

ベースソロの音は「バルカン」でギラッギラにしよう!

このベースだけになる1小節は、サンズアンプではく、「バルカン」というオーバードライブを使ってギラッギラの音を作って出しています。

ここは別の部分と違って、ベースが1番目立つ必要があるので、他のスラップ部分とは若干音が違います。

私も動画ではバルカンを踏んで音を変えています。

バルカンには2種類ありますが、私が使っているのはコンパクトで安いほうです。

(あいにゃんは少し大きめでちょっと高い方を使っています。)

ベースの学校ではこのフレーズを40人全員で弾きました。

※厳密には一番最後のフレーズです。(04:40~)


ここからはあいにゃんさんへの質問をまとめたものです。(本人が答えたものを改変しています。本人の返答まんまではありません)

あいにゃんさんへのQ&A

スラップはどういう練習をするといい?
立って足の屈伸運動などを使って体で感じて演奏していくといい。また、コンプを使わないで練習するといい。
サンズアンプの音色はどうしているの?
指弾きよりも、音量を上げ目、TREBLEも上げ目、ドライブやブレンドは中間くらい。コンプも一緒に使います。あとフジヤマディスコはジャズベースで弾くといい。
歌いながら弾くのはどうしてるの?
とにかく弾きながら歌って体に入れる。歌う場合は結構ベースラインをシンプルにする。コーラスなんかでどうしてもベースのフレーズ的に難しいところは諦める。

 

今回のレポートは以上となります!

なんという夢のような企画だったのでしょうか。またやってほしいですね!

動画の使用機材

邦楽ロックといえばSANSAMP(サンズアンプ)!

邦楽ロックのベーシストに愛用者が多い、SANSAMPですが、あいにゃんさんも愛用者の一人です。

歪みと太い音づくりが簡単に行えるので、たいへん好まれています。

私もこのフジヤマディスコを演奏をした際にはSANSAMPを使用して音作りを行いました。

コンプレッサーはベースの「音作りに必須」

もう一つ私の演奏に欠かせないのが「コンプレッサー」(通称:コンプ)です。

コンプは音を「叩いて粒立ちを揃えてくれる」機能を持ちます。

よく考えの古いの方は「コンプなんて使ったらダメだ」という方もいますが、それは言ってしまえば女性に「メイクなんかするな。すっぴんで街を歩け」というようなものです。

確かに、演奏自体の精密性や綺麗さも大事です。女性のメイクに例えるならば、スキンケアやアンチエイジングが必須なのと近いですね。

その上で、コンプやSANSAMPのようなプリアンプなどでサウンドメイクすることは「きれいなものをより美しくする」ということと同じです。

人様に聞かせる演奏は、自分ができうる最大限の美しさで聞かせる。それがプレイヤーの役目だと思います。なので、「コンプなんか使うな」「アンプ直こそ至高」という考え方の人は「すっぴんじゃないとダメ」というくらいモテない独りよがりな発言ですね。

さて、おすすめのコンプレッサーはこちらです。

EBSのマルチコンプもいいのですが、あちらは調整できるつまみが少ないので初心者向きです。ガッツリ音作りしたいならばこれを買っておくとずっと使えます。

 

バルカンでギラッギラの歪みサウンドを作ろう!

曲中では2箇所、瞬間的にしか登場しませんが、「ベーススラップソロ」という超印象的な部分を彩るオーバードライブがこちら。

 

さぁフジヤマディスコを演奏してみよう!

今回のあいにゃんさんのお話を参考にフジヤマディスコのTAB譜を作ったので、こちらを参考に演奏してみましょう!