こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!
自分が好きな曲の好きなフレーズを弾くのって楽しいですよね。
好きな曲の「弾いてみた動画」を作ってみたい! と思ったことは有りませんか?
実際に多くの奏者が、弾いてみた動画をYouTubeやTwitterにアップして、有名になっていますよね。
あんなふうに自分もなりたいな〜と思ったこともあるかもしれません。
そんなときに、ふと頭によぎるのが「著作権」のことではないでしょうか?
世に出回っている曲にはすべて著作権がありますからね。
そういう作品を好き勝手に使うと、あとから恐ろしいことになるのではないか? と心配になりますよね。
ここでは、私の実体験を元に「弾いてみた動画」の著作権事情をお話していきます。
まず、結論から言うと
YouTubeは公開できるならばペナルティにはならない。(後日動画が削除される可能性はある)
Twitterは限りなくグレーな無法地帯(訴えられたらどうなるかわからない)
なので、原盤の上に自分の演奏を乗せて弾いてみた動画を出すなら「YouTube」でやりましょう。
(公開できない曲もありますが、出せる曲は問題にならないです)
後半で実際にYouTubeのサポートに問い合わせた時のやり取りを紹介します。
では詳しく見ていきましょう。
著作権と著作権管理団体
著作権について
著作権は「知的財産権」の一種で、世の中にある創作物に与えられた、作った人の権利です。
その権利によって、著作物の使用方法等は決められています。
なので、使っていいかどうかというのは「作った人次第」ということです。
つまり、作った人が「自由に使っていいよ」と言った場合は自由に使えますが、「使わないでね」と言ったら使えません。
著作権侵害は犯罪なので、被害者である著作権者が告訴することで処罰されてしまいます。
著作権・出版権・著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金です。
ですが、作った人が全国の使用状況を毎日監視しているかというと、そんなことは無理ですよね。
だから、著作権を本人の代わりに管理している団体があります。
それが「JASRAC」や「NEXTONE」などの著作権管理団体です。
世の中にある楽曲はすべてJASRACが著作権を管理していると思っている方もいますが、そんな事はありません。
著作権者がJASRACと契約することで、初めてJASRACが管理を行います。
なので、今は、JASRAC以外のも管理団体はありますし、ボカロPなどの個人でやっている人はそもそも管理団体に曲を登録していない場合もあります。
ただ、この場合も自由に使えるのではなく、作者個人が「利用規約」などを設けていることがほとんどです。
著作隣接権について
楽曲には、著作隣接権というものも存在します。
著作権は作った人本人の権利ですが、レコード会社から販売されている場合は、著作者だけでなく、レコード会社やミュージシャン、エンジニアなど楽曲制作に携わった多くの人がいます。
そういうレコード会社や実際に演奏しているバンド(実演者)の権利を「著作隣接権」と言います。
ざっくりいうと、原盤を使う権利です。
もし、弾き語りやアカペラ、自分のバンドでカバーする、オケを自作する(打ち込み・DTM)とかであれば、原盤を使っているわけではないので、単に著作権に触れているという話なのですが、弾いてみた動画で原盤の上に自分の演奏を乗せている場合は、著作隣接権というのも発生しているのです。
こちらも侵害してしまうと、先程紹介したような重大な罰則を受けることもあります。
原盤を使うのは、原則としてNG行為です。
ただ、YouTubeはそうでもないみたいのです……
なので、自分の活動スタイルによって、カバーしたいだけなのか? 原盤を使って弾いてみた動画を出したいのかで、考えることが変わってきます。
YouTubeの著作権事情
前述の通り本来であれば、その人の曲をカバーして演奏したり歌ったりした場合は、使用料が発生するのですが、YouTubeは著作権管理団体と包括契約を結んでいるので、「カバー曲を上げてもOK」です。
ライブハウスやカラオケなどで、既存の曲を演奏したり歌ったりして良いのと同じ理由です。
(逆に結婚式場は契約していないために、曲を流したらダメとかありますね)
ある意味、「合法的にカバー曲をネットで公開している」ということです。
なぜこれができるかというと、YouTubeには、content IDという管理する仕組みがあります。
「content ID」を著作権者が登録しておくことで、自分の登録している楽曲に限りなく似通った曲がアップロードされた場合に、然るべき対処を自動で行う仕組みです。
YouTubeはカバー曲などを上げた際に、自動で「content ID」審査が入ります。
大幅に改変している場合はカバーとしてそもそも認識されない場合もありますが、原盤を使用している場合はバッチリ審査が入ります。
原盤を上げても新曲とかは審査が入らない場合があります。
それはまだContent IDが登録されていないというだけなので、後ほど審査対象となり削除される可能性はあります。
この審査後どうなるかが、持ち主(管理団体)によって対応がまちまちです。
- 公開NG:YouTubeにアップできても、他人が見られない。
- 収益分配してくれれば公開OK:普通に公開できる。ただし、収益が分配される。
というような感じで対処が変わります。(実際はもうちょっと条件が細かいです)
つまり、原盤を使用した弾いてみた動画だったとしても、YouTubeの「content ID」的にOKでアップロードできるならば、公開しても良いのです。(ただし広告収入は期待できない)
ルールの抜け穴とかではなく、「content ID」を登録している人、つまり著作権者が「やってもいいよ」と言っているようなものなので、実質本人から許可されているようなものです。
この点について、実際にYouTubeのクリエイターサポートにチャットで問い合わせたことがあります。
その時の答えがこれです。(青が私のメッセージ、灰色がサポートからの回答です)
なので、YouTube上のルールは以下のようにまとめられます。
- JASRACと包括契約を結んでいるので、基本的にはカバー曲の公開はOK
- 著作者は、Content IDという仕組みを使用しYouTube上で著作権を管理している
- Content IDの審査による対処は、著作者によってまちまち
- 逆に言えばContent IDの審査の後、公開できるものであれば、原盤使っていても問題なし
- 収益は分配されるので、期待できない
- 管理者によって、いつでも削除される可能性はある。
ということなので、名言はしていないもののYouTubeでは原盤を使った弾いてみた動画は「曲によっては大丈夫」という解釈ができます。
ということになります。(今後解釈が変わることがありますが2021年5月の時点ではそういうことです)
※ちなみに、あくまで演奏についての体験に基づいた話なので、歌ってみたや替え歌についてはわかりません……
ではTwitterはどうなんでしょうか?
Twitterの著作権事情
Twitterにだって多くの奏者が、原盤の上に演奏を乗せてアップしているよね?
と思った方も多くいるかと思います。
結論から言うと、Twitter自身は管理していないので無法地帯なんです。
なので、許されているわけではなく、著作者から訴えられたり、削除を求められた場合は当然対処しなければなりません。
路上ライブと同じです。
路上ライブもルールの面から言えば、著作権や道路交通法などなど違反しているものは多々ありますが、多くの方がやっていますよね。
そしてそういう活動から有名になっていくアーティストもいます。
Twitterでも同じことが起きています。
Twitterでガンガン原盤を使って演奏を上げて有名になっている人もいます。
これってつまり、「怒られないからやっている」ということです。
怒られなければ何やってもいいの? と思いますよね著作権の実情を考えてみましょう。
自己責任で行動しよう
「怒られなければ何しても許されるの?」
「真面目に生きている人がバカを見るの?」
そんな気持ちになりますよね。
無名の人が一生懸命作ったオリジナルは知名度がないために見向きもされないのに、流行っている曲の上に自分の演奏を乗せて作った動画は山程再生されてちやほやされる。
一生懸命クリエイター活動している人からしたら、こんなに面白くない話はないです。
なので、「弾いてみた」奏者を批判したくなる気持ちもわかります。
ただ、ここらへんの考えはすごく難しいので、私はTwitterやYouTubeでの奏者を批判するつもりもありません。
訴えられる場合もある行為だってことを、知っておきながらやるのであれば自己責任だと思います。
路上ライブにしてもTwitterの弾いてみたにしても、グレーだから広まるというのもあります。
逆に言えば、ガチガチに縛り付けたら広まらないのです。
縛り付けすぎると広まらない
著作者側から見ても、あまりにも厳しい監視をしてしまうと、「広まらない」という自体が起きてしまいます。
一昔前、サブスクもない時代に「コピーコントロールCD」という、コピーができないCDが売られた時期がありました。
簡単に言うと、CDからオーディオプレイヤーに取り込むことができないのです。
複製できないので、CDを買うしかなくなるのですが、それでは楽曲が広まらないし、かえって違法コピーがはびこる原因にもなりました。
コピーコントロールCDはファンやミュージシャンからの批判の声や技術的な問題も有り、廃れていき、また元のコピー可能なCDの形式に戻りました。
たしかに、コピーできてしまえば1枚のCDを友だちで貸し合ってコピーし合える。そうすると売上的には1枚だけです。
ですが、プラスに捉えれば「買う予定がなかった人がそれをキッカケに知ることができた。その結果どんどんファンが増えていく可能性がある」というふうにも考えられます。
(この話は長くなるのでこれ以上は割愛します)
「弾いてみた」の話に戻ると、弾いてみたを通して知らなかった曲を知るキッカケになり、その結果オリジナルアーティストのファンになる可能性もあります。
だから、最近の若手バンドは結構、演奏者本人が自分の演奏を「弾いてみた」として出している人を、率先してリツートしている人もいるくらいです。
もちろん、弾いてみたを嫌がるアーティストもいるでしょう。
最初にも出てきたように、「著作者の考え方次第」なのです。
実際問題、訴えやすい制度になっていない…
こんなこと言ったら誤解されて問題になりそうですが、現実的な話をすると訴えられることは少ないです。
というのも告訴するにしてもお金と時間がかかります。
また、著作権を主張し、コンテンツの削除を求めるにしても「本名や住所など個人情報」を相手に知らせることになります。
なので、個人で著作権を管理している場合、著作権侵害でツイートや公開されている動画の削除を訴えたくても「身バレ」してしまうために、それを嫌がって訴えることができず泣き寝入りしてしまう人もいます。
これくらい「著作権侵害を訴える」というのはハードルが高いのです。
(だから多くの人がJASRACなどに管理を委ねているし、YouTubeなどの一律のルールに乗っかって管理しているのです)
語弊のある言い方ですが、著作権侵害していても、なかなか訴えることができないのです。
これはこれで、著作権者が弱い立場にいるので問題だとは思います。
もっと著作者の権利はちゃんと守られるべきですからね。
結果的に、訴える権利があっても訴える人が少ない
確かに法律やルールで考えたら、弾いてみた動画は限りなくNGな行為なんですが、著作者が容認している場合は問題ないとも言えます。(こんなこと言ったら真面目な人や法律家に怒られそうですが……)
だから、多くの人が勝手に弾いてみた動画をアップしているということです。
仮に権利を侵害していたとして、わざわざ何の害もない人を一人ひとり罰することはできても、やるメリットがないのです。
ただ、悪質だと判断されれば罰せられることもありますし、どんなに再生数を稼いでいても他人の権利で得たものは、ルールが変われば自分の意志とは関係なく削除されることもあります。
違法かどうかを論ずれば、違法かもしれないが・・・
私は法律家ではないので、すべての細かいことはわかりませんが、違法な行為かどうかを論ずれば違法な点もあるでしょう。
しかし、YouTubeにアップできて公開してもペナルティにならないという例もあるように、被害にあった側の考えも考えると難しい問題なんですよね。
例えるならば、
- 誰もいない夜道の赤信号を渡る
- 私有地を近道として使う
- 路上ライブを行う
などなどの行為をどう考えるか? というのに似ています。
なので、ここでは明確な結論はなく、自己責任で行ってくださいね! としか言えないのですが、何度も言いますが、
YouTubeは「公開可能なものであれば、原盤を使っていても問題はなし(ただあとから削除される可能性はある)」というのは事実なので、それだけは覚えておいてもらえれば良いなと思います。
権利というのも結局は人と人との問題。
ある人との間では許されていても、別の人とは許されないことって日常でもありますよね。
それと同じくらい難しい問題なので、自己判断で活動してみてくださいね!