今回は学祭ライブでも盛り上がる、チャットモンチーの代表曲「シャングリラ」のベースラインを弾く時のコツを解説していきます!
こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!
チャットモンチーのベーシスト アッコさんのこのベースラインはシンプルながらとてもグルーヴィーなベースラインですね。この記事では、譜面などではなかなか掴みづらい演奏のポイントを解説していきます。ここに楽譜やタブ譜は掲載できませんが、ぜひ目で見て「耳で聞いて」感覚を掴んでくださいね!
【耳コピ】シャングリラのベースライン&打ち込みドラム
さてさて、まずはこの曲のベースラインを聞いてみてください。ドラムとベースだけなので、ベースラインが聞き取りやすいかと思います。
※耳コピなので、若干原曲と違うところがあるかもしれませんがご了承ください。
シャングリラのコード進行
Key:A♭
※基本的には4/4拍子ですが、部分的に5/4拍子や3/4拍子が入ってきます。その小節には(5/4)という形式で表記します。
【イントロ】
|ドラムのみ |ドラムのみ |ドラムのみ |ドラムのみ |
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|(5/4) B♭m7 E♭|←※最後の1拍がE♭
【サビ】
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|(5/4) B♭m7 E♭|
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|B♭m7 |Cm7 |A♭ |A♭ |
【Aメロ】
|B♭m7 |E♭ |B♭m7 |E♭ |
|B♭m7 |E♭ |B♭m7 |E♭ |
【Bメロ】
|B♭m7 |E♭7 |B♭m7 |E♭7 |
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
【サビ】
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|(5/4) B♭m7 E♭|
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|B♭m7 |Cm7 |A♭ |A♭ |
【間奏】
|B♭m7 |E♭ |B♭m7 |E♭ |
|B♭m7 |E♭ |A♭ |A♭ |
【Cメロ】
|B♭m7 |E♭ |B♭m7 |E♭ |
|B♭m7 |E♭ |B♭m7 |E♭ |
【Dメロ】
|A♭ |E♭ |A♭ |E♭ |
|A♭ |E♭ |C7 |Fm |
|(3/4)ドラムのみ|
【サビ】
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|(5/4) B♭m7 E♭|
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
|(5/4) B♭m7 E♭|
【サビ2】
|B♭m7(onF) |E♭(onG) |C7(onE) |Fm7 Fm7(onE♭) |
|B♭m7 |Cm7 |A♭ |A♭ |
さて、この曲のポイントを解説していきましょう!
シャングリラのベースラインの5つのポイント
今回はサビやメロごとにコツを解説していきます。
主に5つの部分についてお話します。
- サビのオクターブフレーズ
- サビの5/4拍子
- メロの基本ベースラインの展開3パターン
- コーラスをやる際のポイント
- 最後のサビのベースラインの理論的解説
さて、それぞれのポイントを解説していきましょう!
【攻略1】サビをノリよく演奏しよう!
サビは以下の4つのポイントを押さえると、原曲っぽくなります。
- オクターブフレーズ
- ドラムをしっかりと聞く
- 音を短く切る
- 同じ弦でコードチェンジする
動画でも解説しているので、動画で見たい方はこちらをチェック!
文章で見たい方は下を読んでくださいね。
1、オクターブフレーズについて
サビはノリのいい「オクターブ」の音使いを使ったフレーズで構成されています。
※オクターブフレーズ
ルート(1度)に対してオクターブ上の音(8度)を交互に弾くフレーズダンスナンバーなどで使われます。
この位置関係は非常によく使われるのでしっかりと覚えましょう。
左手は、ルートを人差し指で押さえて、オクターブ上の音は薬指か小指で押さえます。(アッコさんは小指で押さえています)
右手は、指の長さ的にルートを人差し指、オクターブ上を中指で弾きます。
2、ドラムをしっかりと聞く
この曲のドラムは、バスドラム(一番低い音がなる足でペダルを使って踏む太鼓)が「4分打ち」というパターンを演奏しています。一番最初がバスドラムだけから始まるので、そこを聞くとわかりやすいですね。この4分打ちはダンスミュージック系で使われることが多いですね。今はノリのいい邦楽ロックの曲の定番パターンにもなっています。
シャングリラではこのバスドラムの4分打ちが1曲通して一貫して行われています。このバスドラム4分打ちがこの楽曲のリズムの骨組みになります。
サビのベースラインはこの4分打ちのバスドラのパターンにシンクロするようにルートを弾くのがポイントです。
3、音を短く切る
オクターブフレーズは4弦と2弦を交互に弾くので、慣れてないとどちらの音も伸ばしっぱなしになってしまいます。
ベースは「休符でリズムを作る」とも言えるくらい「音の長さ(音価)」のコントロールがポイントになります。
左手の弦を押さえている指を押さえっぱなしにしないで、次の音を鳴らす前に指を浮かせて音を短く切るようにしましょう。
どう違うのかは、文章で読むよりも上の動画をみて実際に感じてみてくださいね!
4、同じ弦でコードチェンジする
この曲のサビの最初の4小節のコード進行は
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
となっていますが、これを全て4弦と2弦の組み合わせだけで弾くこともポイントです。
ベースには同じ音がいろんな弦に存在しますが、細かいことを言うと「音色」が若干違います。
太い弦の方が音が太いです。
例えば、E♭という音は、3弦6フレットにも4弦11フレットにも、2弦1フレットにも同じ高さのEフラットがありますが、それぞれ弾いてみると、「音色」が違うことが耳で感じられると思います。
コードが変わる時に、同じ弦を使うことによって、音色の統一感が出ます。
また、同じ弦の上をスライドを使って移動することで、「うねり」が出ます。
これもやはり、動画で実際に聞いてみてくださいね。
コードの押さえるところを記しておきます。
- B♭m7・・・・4弦6フレット、2弦8フレット
- E♭・・・・4弦11フレット、2弦13フレット
- C7・・・・4弦8フレット、2弦10フレット
- Fm7・・・・4弦13フレット、2弦15フレット
- Fm7(onE♭)・・・・4弦11フレット、2弦13フレット
続いて、次のポイントに行きましょう!
次は「5/4拍子」の攻略です。
【攻略2】サビの5/4拍子
まず、動画で見たい方はこちらをチェック!
文章で解説を読みたい方は以下をお読みください。
この曲の特徴はなんといっても、5/4拍子が頻出する所にあります。
一般的な楽曲のほとんどが4/4拍子であるのに対し、「部分的」に5/4拍子が入ります。これが非常に厄介ですが、これに関してはある意味「感覚的に」攻略してしまったほうが良いです。
まず、この5/4拍子の5拍を「1234」と「5」に分けます。
そして、4拍分は普通にオクターブフレーズで演奏して、残りの1拍(5拍目)で4弦11フレットのE♭をめがけてブーンとグリス(グリッサンド)にします。
「1拍余分をグリッサンドする」というように体で覚えてしまうことがこの曲を乗り切るポイントですね。
また、この曲は4/4拍子でアクセントのあるメトロノームを使っていると見事にアクセントの位置がズレていくので、「アクセントなし」の設定で練習するようにしましょう。
例メトロノームのアクセントの例
- アクセントあり・・・ピッカッカッカッピッカッカッカ、、、
- アクセントなし・・・カッカッカッカッカッカッカッカ、、、
※アクセントなしだと、一人で練習しているとどこを弾いているのかわからなくなるかもしれませんので、部分的な練習はメトロノームで行い、曲練習は私の動画に合わせて行なうと良いかと思います。
さて、サビの部分はこれくらいにして、メロのお話に行きましょう!
【攻略3】メロの基本ベースラインの展開3パターン
まずは動画でチェック!
文章で解説を読みたい方は以下をお読みください。
メロの部分はバスドラ4分打ちにシンクロさせるようなリズムから外れます。
ドラムとベースの連携は必ずしも「合わせないとダメ」ということはないです。むしろ、バスドラ4分打ちは8ビートのリズムの中でも自由度が高く、ベースラインは自由なリズムで演奏されることが多いです。
このメロ(Aメロ)の前半は、以下のようなリズムパターンになります。
サビと打って変わって、「裏」にだけ入るパターンですね。このリズムパターンは「表」のバスドラをちゃんと聞いてそれに呼応する形で、しっかりと休符を意識して「ンタ」と入れていくのがポイントです。
Aのメロの後半で以下のパターンに変化します。
これは最初のパターンの応用パターンですね。オクターブの音が入り、最後は表になります。このパターンはオクターブ上の「ペ」を短く切り、4拍目の「ドゥーン」は次のコードに向かってスライド気味にいれます。
オクターブ上の音を使うので、ルートは人差し指で押さえるのがポイント。
そして、Bメロ前半では、以下のリズムにチェンジします。
2拍目の裏に♭7度の音(ルートから−2フレットの音)を入れていきます。これも最初のパターンの応用とも言えるパターンです。休符だったところに音が入っていますが、音程を変えることで、2拍目裏が強調されるので最初のパターンのリズムと同じようなノリを感じます。
この3つ目のパターンは、ルートを薬指で押さえるのがポイントです。そして、−2フレットの場所にある♭7度の音を人差し指で押さえます。
なので、今までは人差し指で押さえていたのですが、薬指にルートを切り替えることがここでのコツになります。
※余談ですが、♭7の音はコードがにセブンスが入っている時に使います。・・・例、C7やCm7など。普通の7の音(ルートから−1フレット)は「メジャーセブンス」と言ってメジャーセブンスのコードのときのみ使います。
このBメロのコードは
|B♭m7 |E♭7 |B♭m7 |E♭7 |
となっているので、2つ出てくるどちらのコードも♭7が使えます。
さて、4つ目のポイントに行きましょう!
【攻略4】コーラスを行なう時の注意点
まずは動画でチェック!
こちらの解説はサラッと行きましょう!
ベーシストがコーラスを行なう際は
- 拍頭はしっかりと演奏して、歌の入るところはスライドでごまかす。
- ライブ時は口元にマイクがあるポジションでかつ、指板が見えるセッティングにする
です。
コーラスを行なう場合は、しっかりとコーラスに意識を向けたほうが良いです。つまり、ベース演奏は、大事なところだけはしっかりと弾いて、ちょっと手を抜くくらいの気持ちで最初はやりましょう。中途半端が一番良くないですからね。
大事なところは、「拍頭の音」です。ここがリズム的にも音程的にもしっかりとハマれば大丈夫です。
そして、ライブ時にやりがちなのが、指板を見たいがためにマイクを口元から話してしまう人です。これはベーシストに限ったことではないですが、楽器を見るときにマイクから離れてしまう人がいますが、視聴者が一番聞きたいのは「歌」なので、こちらをしっかりと行いましょう。
【攻略5】最後のサビの盛り上がりパターンを
さぁ最後のポイントです。ラストのサビはベースラインが盛り上がっていきます!
さて、音楽理論の話ですね。解説していきましょう!
ステップは2つです。
- 最後のサビのベースフレーズを理解する
- コード進行のコードトーンを理解する
- ドミナントモーションを理解する
ステップ1、最後のサビのベースフレーズを理解する
最後のサビだけ以下のように変化します。
|B♭m7(onF) |E♭(onG) |C7(onE) |Fm7 Fm7(onE♭) |
※on◯となっている場合、ベースはon◯の「◯」を弾く。◯はコードではなく単音。
ここはベースはオクターブフレーズなのでルート&オクターブ上の音しか弾かないので、ベースが弾く音(単音)だと以下のようになります。
|F |G |E |F E♭ |
さて、メロディが変わっていないのに、なぜこのようなフレーズになるのでしょうか?その秘密は「コードトーン」にあります。
ステップ2、サビのコード進行のコードトーンを理解する
まずは普通のサビの4小節のコード進行をおさらいしていきましょう!
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
これらはコード、つまり「和音」なので、複数の音が積み重なってできています。
その和音を構成する音、「コードトーン」を整理してみましょう。
最後のサビで変化するのは、
|B♭m7 |E♭ |C7 |
の3小節。
これらのコードトーンは以下のように整理できます。
B♭m7
B♭m7の構成音は B♭ D♭ F A♭
E♭△※単音と間違えられないように△を付ける場合もある。
E♭△の構成音は E♭ G B♭
C7
C7の構成音は C E G B♭
となっています。
そしてここでもう一度、変化前と変化後の音を並べてみましょう!
|B♭m7 |E♭ |C7 |
↓
|F |G |E |
※これはコードではなく単音
FはB♭m7の構成音であり、GはE♭の構成音であり、EはC7の構成音だということがわかります。
これはつまりどんな変化かと言うと、ベースがコードのルートを弾かずに、コードを構成する音(コードトーン)を弾いている。という変化を加えています。
本来であれば、ベースがルートを拍頭にしっかりと弾くことでそのコードは安定しますが、最後のサビで盛り上がりを表現するために、あえてルート以外を弾いていると解釈できます。
ステップ3、ドミナントモーションを理解する。
最後に、「ドミナントモーション」というコード理論についてお話します。
※ここまででお腹いっぱいの方は演奏には関係ないので読み飛ばしてくださいね!
これは一番わかり易いのは「起立!礼!着席!」で使われる時のコード進行なのですが、
起立!→C(基準となる音)
礼!→G7(基準となる音から5番目の音)
↓ドミナントモーション
着席!→C(基準となる音へ着地)
という「解決感がもっとも出る」コード進行があります。
大事な部分を抜き出すと
G7→C
です。
これは、着地する音に対して5度の関係の音ならば何の音でもいえます。
例、
- C7→F
- D7→G
- B♭7→E♭
などなど、ということです。
そして、更に言えば、着地する側の音は「マイナーコード」でも大丈夫です。
- C7→Fm
- D7→Gm
- B♭7→E♭m
ということです。
つまり、
着地したい音に対して、5度上の音の「セブンスコード」から向かうコード進行を「ドミナントモーション」といいます。
ディグリーネームという表記で表すと以下のようになります。
V7→I(Im)
さて、なぜこの話をしたかと言うと、サビのコード進行のこの部分にこの「ドミナントモーション」が使われているのです。
|B♭m7 |E♭ |C7 |Fm7 Fm7(onE♭) |
どこかわかりますか?「セブンスコード」が1つしかないのですぐに分かりますね。
C7 |Fm7
この部分です。
Fから数えて、Cは5番目の音なので、ドミナントモーションの関係が成り立ちます。
しかし、ここで問題なのは、このキーがA♭ということです。
キーがA♭の場合の使える7つの音と、それら7つの音の組み合わせで生み出されるコード(ダイアトニックコード)は以下のようになります。
ディグリー | I△7 | IIm7 | IIIm7 | IV△7 | V7 | VIm7 | VIIm7(♭5) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
スケール(単音) | A♭ | B♭ | C | D♭△7 | E♭ | F | G |
コード(和音) | A♭△7 | B♭m7 | Cm7 | D♭△7 | E♭7 | Fm7 | Gm7(♭5) |
つまり、キーA♭に本来出てくるCをルートとするコードは「Cm7」であり、「C7」ではないのです。
コードの構成音を見比べてみましょう。
Cm7
Cm7は C E♭ G B♭で構成されているので、全てキーA♭の音です。
C7
一方C7は C E G B♭で構成されているので、「E」がキー外の音なので、特殊なコードなのです。
なぜここで「C7」が出てきているのか?それは話は簡単で、その方が次のFm7へ向かう着地感が強まるからです。
キー外の音を使って作られる「◯7」はこのように、「次の音に向かうドミナントモーション」を作り出すためにあえて使われるのは「頻出」なのです。
一番最後のサビでは、この部分でベースが「E」を弾くので、「違和感」を覚えたり、「なんか外れているような気がする」と感じた方は耳が良いですね。特殊な音使いなのです。
キーにない音やコードもここぞというスパイスで使われることが多く、逆に言えばキー内の7音しか使わないと、無難で当たり障りのないつまらない曲になりがちです。
ドミナントモーションとしての「◯7」はうまいこと使うと、ちょっとの変化で曲に色気が出ますので、ぜひ覚えておいてくださいね!
※ちなみに、ここの部分はコードだけでなくメロディにも「E」音が使われています。作曲者がどちらを先に作ったかはわかりませんが、メロディとコードは連動しています。
まとめ:ノリを出して弾こう!
さて、シャングリラのベースライン解説いかがでしたでしょうか?この曲は何よりも、ドラムの一定のバスドラ4分打ちに合わせて、ノリよく軽快に弾くのがポイントです。いきなり全部を意識して演奏するのは難しいので、まずは
- 指使い
- リズム
- 音使い
それぞれを1つずつ確認して、できるようになってから組み合わせていきましょう!
また、実際に自分の耳で何度も「原曲」を聞いて感覚を掴むのもポイントです。私も今回の「弾いてみた」をとるために、原曲だけでなく、演奏の指板の位置などが把握しやすいライブ映像も見てニュアンスを確認しながらやりました!これに勝る覚え方はないですね!
ぜひ、上のコード進行と解説をヒントに動画を見ながら耳コピしてみてくださいね!