マルチコンプ3つの魅力と使い方【EBS MULTICOMP Studio Edition】

今回は、ベースコンプの定番「EBS MULTICOMP Studio Edition」(イービーエス マルチコンプ スタジオエディション)の特徴について解説をしていきます。

このモデルは、すでに生産終了し、新しくブルーラベルというシリーズが発売されました。ブルーラベルでは、ツマミが一つ増えて進化しているわけですが、基本的な特徴は変わっていないので、まずはスタジオエディション(通称SE)を使って解説していきます。

 

現行品のブルーラベルはこちら

 

マルチコンプの特徴を一言で表すと、

スイッチひとつでベースならではの太い音が手に入る。
今回は、そんなマルチコンプを深く研究していきましょう!

こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!

マルチコンプ3つの魅力

今回は、マルチコンプの魅力を3つに絞ってお話していきます。

  1. シンプルな設計で使いやすい
  2. マルチコンプ最大の魅力チューブシミュレーター
  3. 裏技アリのマルチバンド

シンプルな設計で使いやすい

コンプに限らず、エフェクターはツマミが増えてセッティングの自由度が高くなるほど、設定の難易度は上がります。その点では、マルチコンプは、コンプレッサーとしての設定が1つのツマミでできるので、とても音作りしやすいという点がメリットと言えます。

コンプ(コンプレッサー)とは?
音を圧縮してレベルを上げることで、音を太くしたり音圧を上げる機械。
コンプレッサーとしての機能を持つエフェクターは、細かくなると
  • アタックタイム
  • リリースタイム
  • レシオ
  • スレッショルド
  • ニー

の5項目についての設定が可能になるものがありますが、マルチコンプは、レシオ以外の設定は、全てプリセットされている(決められた設定になっている)ので、自由度が下がる反面、設定はカンタンです。捉え方を変えれば、プリセットされている=そのエフェクターの個性とも言えますね!

【図解】コンプレッサーを使いこなすための5つの用語<スレッショルド・レシオ・アタックタイム・リリースタイム・ニー>

マルチコンプで、操作が可能なのは、

  • COMP/LIMIT(コンプ/リミット)
  • GAIN(ゲイン)
  • 3段階のモード切替(TUBESIM・MB・NORMAL)
  • パッシブアクティブ切り替えスイッチ
  • マルチバンドコントロール

この内、コンプ感を調整するツマミは「COMP/LIMIT」の1つのみです。

これは「レシオ」の調整にあたり、1:1〜5:1の範囲内で設定できます。デジタルな設定ではなく、アナログに設定できるようになっています。このツマミを一番左にすると1:1、一番右まで回すと5:1になり、1:1では、圧縮がかからない状態になります。

レシオとは?
「圧縮率」のこと。コンプレッサーはある一定の音量を超えた音を圧縮していく機械で、その超えた音をどのくらいの力で抑え込むのかを決めるのが「レシオ」。10:1や20:1など左の数字が大きくなるほどに、圧縮率が高い(押さえ込む力が強くなる)。

「COMP/LIMIT」を一番左(1:1)の状態にして、GAINを上げ、GAINブースターとして使ったり、また、この後説明するチューブシミュレーター(TUBESIM)の音色を使ったり、単純にコンプとしての使い方ではなく音色を変える機械として使う場合もあります。

コンプとして使うというよりは、いい感じのナチュラルなコンプをかけつつ、太い音を作る、という“音色を変えるエフェクター”という立ち位置の機材とも言えます。

アタック音を自然に残す

高機能なコンプレッサーだと、一定の音量を超えた音に“コンプがかかり始めるまでのタイミング”を設定できることがあります。(アタックタイム)この設定次第で、アタック音を潰したり、潰さず残したりを決めることが出来ます。

アタックタイムも、マルチコンプはプリセットされており、アタック音(ピックや指が弦を弾く音)はナチュラルに強調されるように設定されています。なので、不自然な音になることがなく、エフェクター初心者にもやさしいコンプレッサーです。

アタックタイムを含めた全体の音量のコントロールをしたい場合は、リミッターの方が向いています。(リミッターはコンプの一種ですが、役割が違います)

マルチコンプは、アタック音が潰れずに残るので、最大音量(アタック音)が押さえられず、リミッターほど音圧を上げる効果はありません。

5:1で音はどう変わる?(6:22〜)

6:22〜デモ演奏

コンプをかけることで、アタックが強調され、その後に伸びる実音が潰されてメリハリがつくので、タイトな印象になりますね。

サスティンが伸びる

マルチコンプの効果として、アタックを強調する他、サスティンを伸ばす効果も得られます。

通常、弦の振動の減衰とともに音も小さく消えていきます。その小さくなった音量をコンプによって底上げすることができるので、音が伸びて聞こえるようになる、という仕組みです。

コンプがかかるライン(スレッショルド)は変えられないの?

ある基準を超えた音に対して圧縮をかけていくのが、コンプの役割ですが、コンプをかける基準のライン(スレッショルド)をマルチコンプでは変えられないの? というお話です。

答えを言うと、パッシブ/アクティブの2段階で設定することは可能です。(新シリーズのブルーラベルは設定が可能になっています)

パッシブ・アクティブとは?
簡単に言えば、
パッシブ……電池の要らないベース
アクティブ……電池が必要なベース
アクティブ・ベースのほうが、ベースからの出力が大きいので、もし、コンプをかける基準ラインが変えることが出来ないとパッシブとアクティブでコンプのかかり方に大きく差が出てしまいます。

もし、アクティブ・ベースをパッシブモードで繋いだらどうなるの?

特に壊れることはありませんが、パッシブモードは、より音量が小さいラインでコンプがかかるセッティングになっているので、アクティブ・ベースを繋ぐと、圧縮されすぎて、詰まったような音になってしまいます。

「なんか音がおかしいな?」と思ったら、パッシブ/アクティブモードを確認ですね!

マルチコンプ最大の魅力チューブシミュレーター

前項では、マルチコンプのコンプレッサーとしての特徴をお話しました。この項目では、マルチコンプの最大の魅力とも言える機能“TUBE SIM(チューブシミュレーター)”についてお話していきます。

チューブシミュレーターとは?

真空管のことを“チューブ”とも呼びます。昔は、テレビやオーディオにも真空管が使われていました。ギターやベースを通したときの温かみのある音や真空管ならではのコンプ感が愛され続け、今でもアンプには真空管が採用されることが多いです。

マルチコンプのチューブシミュレーターは、シミュレーターなので、中に真空管が入っているわけではなく、チューブを通さずに、チューブ感をお手軽に演出できる、というスグレモノ。

コンプとしての機能よりも、このチューブ感のある音色が欲しくてマルチコンプを使う、という方もいます。

チューブシミュレーターの音の印象

チューブシミュレーターの音の印象としては、チューブらしい温かみが出た、音が太くなったという風に感じますね。感覚的には、空気感が出た、あるいは、音の膨らみが増した、と感じるのではないでしょうか?

音色について注目してチューブシミュレーターについて語ってきましたが、チューブシミュレーター・モードでも、もちろんコンプのかけ具合は調整することが出来ます。

ノーマルモードとチューブモードの好きなサウンドで、コンプ感のある音をつくれるということです。

裏技アリのマルチバンド

ココまで、マルチコンプはシンプルで設定しやすく使いやすい、というお話をしてきましたが、ここからは上級設定編と参りましょう。

マルチコンプの3つのモードのうちの一つ“MB(マルチバンド)”モードです。

この設定を理解するためには、コンプレッサーの知識が必要なので、カンタンに説明しますね。

コンプレッサーは、出過ぎた音量に対して圧縮をかけるという機械ですが、その機能をより細分化して、音域別にコンプのかけ方を変える、という設定ができるのが、このマルチバンド・モードです。

つまり低音域が出すぎたら、低音域だけを圧縮をかける、また逆に高音域が出すぎたら、高音域だけに圧縮をかけるという設定が個別に設定できるようになっています。

この設定は、エフェクターを開ける必要があります。

もし設定する際は、プラスチックドライバー(セラミックドライバー)を使いましょう。基盤の近くをいじっていくので、電気が通りやすい素材で触れてしまうと回路が壊れてしまう危険性があります。お取り扱いは慎重に、自己責任でお願いいたします。

MBモードのデモ演奏(2:29〜

マルチバンドをコントロールすれば、表面のツマミをいじらなくても、分かるレベルに音色が変化します。

5弦ベースは、4弦に比べて、低音が出やすいために低音のコンプがかかりやすいので、そのかけ具合を調整するのには良さそうな機能です。

様々な設定比較

せっかくなので今回は、いろんな設定で弾いてみました。(4:51〜

・デフォルト

低音が少し潰れすぎているせいか、くぐもった印象がありますが、ジャリッと歪んだ感じとしても使えるかもしれません。

・低音域コンプ:強 高音域コンプ:強

かなりシャリシャリとした音で、芯がないようにも聞こえますね。

・低音域コンプ:弱 高音域コンプ:弱

コンプ感が薄く、開けたような感覚になります。5弦の音が少し低音がぼわっとしてしまうかなという印象です。

・低音域コンプ:やや弱 高音域コンプ:やや強

デフォルト状態に比べ、やや輪郭が明るくなったような感じがあります。

マルチバンドの裏ワザ?

「チューブモードのコンプの効きは変えられないのかな」と思いきや、実はマルチバンド・モードでなくても、裏側のマルチバンドをいじると他のノーマル、チューブ・モードにも反映されるのです!(公式の説明書にも触れられています!)

チューブモードで裏側のマルチバンドの設定を変えた場合を比較してみました。(5:40〜

チューブモードで裏側を「低音域コンプ:強 高音域コンプ:強」に設定すると、やはり詰まったような音の印象になりました。口に手を当てて、叫んでいるような感じですね。勢いはある(音圧はある)のに、体(耳)に飛び込んでこない、という感覚がします。

まとめ:マルチコンプを選ぶ理由は?

マルチコンプを買うか買わないかは、この音色が気に入るかどうか、という視点が大きいように思います。

音色が気にいるのであれば、シンプルで使いやすいという点が私自身も非常に気に入っていて、変な音になってしまうなど間違った使い方にならないようになっています。

細々とお話してきましたが、結論、

スイッチひとつでベースならではの太い音が手に入る。

というのが、マルチコンプの最大の魅力だと思います。

プリアンプ的に、常時ONにしておく使い方もアリですし、ベースソロやスラップ時に音を前に出すためにゲイン上げる役割としても使えます。

ぜひあなたなりの使い方を見つけてみてくださいね!

おまけ:開封してみた(?)

エフェクターを開けるのは、ちょっとドキドキだなぁ……という方もいらっしゃるでしょう。ということで、今回はマルチコンプを開けて、裏側のトリマー(マルチバンド)をいじるだけの動画もご用意しました。

旧モデルSEは、マイナスドライバーで、新モデルのブルーラベルはプラスドライバーで調整します。

もし設定する際は、プラスチックドライバー(またはセラミックドライバー)を使いましょう。基盤の近くをいじっていくので、電気が通りやすい素材で触れてしまうと回路が壊れてしまう危険性があります。お取り扱いは慎重に、自己責任でお願いいたします。

現行品のブルーラベルはこちら