【徹底比較】グラフィックイコライザーとパラメトリックイコライザーのメリット・デメリット

「イコライザーが欲しいんだけど、いろいろ種類があるし……。何を使ったらいいんだろう?」そんなお悩みを持つエフェクター初心者さんに向けて、今回は2タイプのイコライザー(パラメトリック・イコライザー/グラフィック・イコライザー)のメリット・デメリットについて解説していきます。

目次

そもそもイコライザーって何のために使うの?

まずは、どうしてイコライザーを使うのか? その目的から整理していきましょう。

イコライザーは、倍音の出方(音量)を調整することで

  • 音抜けを良くする(音を聞こえやすくする)
  • 音色のキャラクターを決める

という役割を担います。

音色のキャラクターというのは、ギラギラしたサウンドとか、やわらかいサウンドとかの印象を変えることで、○○のアンプっぽくしたり、あるときは☓☓のアンプっぽく変える……みたいな万能性はありません。(そういうエフェクターは別にあります)

エフェクター初心者ベーシストにオススメなのは?

「エフェクターのことがあんまりまだわからない……」という初心者さんにオススメなのは、

シンプルなパラメトリック・イコライザー

です。

このあと詳しく解説していきますが、パライコ(パラメトリック・イコライザー)のほうが、エフェクター、アンプ、またベース本体のトーンボリュームのツマミなど、登場頻度が高く、かつ直感的・感覚的に使いやすいという点から、私はパライコをオススメしています。

ただここで注意して欲しいのが、「パライコ=かんたん」ではないということです。

「OK〜パライコね〜♪あ、このツマミたくさんあるやつかっこいいじゃ〜ん。これにしよっ」という具合に選んでしまうと、パライコにも上級者向けがあるので、お買い求めの際は要注意です!

※ 本来の意味のパライコとは異なりますが、周波数が固定されている少ないバンド(ベース、ミッド、トレブルなど)のイコライジングが行えるペダルを今回はパライコの仲間として紹介しています。

グラフィック・イコライザーのメリット・デメリット

グラフィック・イコライザー(グライコ)は、周波数ごとに細かく音量をコントロールすることができるタイプのイコライザーです。

今回の動画で紹介している「MXR ten band eq」では、10の周波数帯域(バンド)を調整できるようになっています。アンプなどで見かけるベース・ミッド、トレブルをさらに細分化したもの、ということですね。

「バンド=帯」ですね。ボーカル、ギター、ベース、ドラムとかの編成を指すバンドではありません。

「MXR ten band eq」では、31.25、62.5、125、250、500、1K、2K、4K、8K、16K(Hz)の周波数でコントロールできるようになっています。

グライコは調整するツマミが多くなるためか、上下にスライドさせるツマミが並んでいるデザインのモノがほとんどですね。

グライコのメリット

①視覚的にブーストorカットの状態がわかりやすい

「視覚的に操作しやすい」というのは、グライコの大きな特徴とも言えます。

別の動画で音の成分を視覚化できるアナライザーを使っていますが、この波形がそのままつまみになったようなイメージです▼
(サンズはパラメトリックタイプです)

また、周波数帯域が細かくセットされているので、感覚的なパライコに比べると理論的なイコライザーとも言えます。

細かく設定できるということは、逆を返せば、周波数ごとのブーストorカットがどこにどんな効果が得られるかを知っていないと使いづらいので、中級者向け、と言った感じでしょうか。音の特性を数値で理解している人には、逆に使いやすいのがグライコです。

②イコライジングを数値で理解できる

パライコでは、もっとハイ(高い成分)が欲しいな〜と思ったら、トレブルをぐいっと上げるだけですが、グライコでは、1K、2KHz…など、より細かく設定することが可能です。

ハイの中でも、どの高さのハイが欲しいのか? というようなことがグライコの設定の細かいツマミであれば、自分がほしい場所が何Hzなのかがわかりますね。

バンドメンバーがお互いに数値で音が分かると、他パートとの「音の棲み分け」が行いやすくなります。

③バンドの数だけ細かく設定できる

今回紹介しているのは、10バンドですが(10バンドなら10箇所が調整可)、メーカーによって、バンド数も違いますし、ツマミで動かせる帯域も異なります。

グライコのデメリット

①バンドの数だけ細かく設定できるので、音作りを複雑にしがち

自由に設定できる項目が多いということは、それを使いこなす能力も自ずと求められてきます。

いわば、カレーのルーを使ってカレーをつくるのか、スパイスの配合からカレーをつくるのか……というようなことで、自由な設定項目が増えれば、初心者には難しくなります。

②数値(周波数)のことが分かっていないと、どう操作したらいいのかが分かりづらい

「音作り」に関しては、やっていくうちに耳がどんどん育っていくものですが、最初のうちはツマミを動かしても「音色の変化」がよく分からなかったり、どんな音が抜けの良い音なのかも分からなかったりするので、バンドの多いグライコを持て余してしまうかもしれません。

③目や数値に依存して、「耳で聞かない音作り」に陥る可能性がある

視覚的、理論的に設定できることから、

「雑誌でこうするといいって“読んだ”」

「○○さんがYouTubeでこんな風に音作りするといいって“言ってた”」

というような見聞きかじったことで、目盛り頼みに音作りをしてしまう、そんな罠にハマってしまう人もいます。

最終的には、自分の耳、そして聞いている人の耳に良い音を届けることが大切ですから、数値に縛られないように気をつけましょう。

④機材に設定されている数値以外の周波数はイコライジングできない

「MXR ten band eq」は、10バンドも調整できるので、バンド数としては多いほうですが、かゆいところに手が届かない! ということも起こります。

例えば、500Hzの次のバンドは、1KHz。この間の800Hzくらいをブーストしたいんだけどな〜と思ってもできないわけです。

参考にBOSSのベースイコライザーを見てみましょう。

ベースにとってオイシイ中音域の周波数に集中しているので、7バンドとバンド数は少なくなりますがかなり実用的な機種ですね。

他のグライコの設定を見た目だけ真似ても、このように数値が違う場合があるので、注意が必要です。しっかりバンドと、どう音色が変わるのかを理解して設定していきましょう。

パラメトリック・イコライザーのメリット・デメリット

設定できる周波数が固定されているグラフィック・イコライザー(グライコ)に対し、調整したい周波数まで設定できのが、パラメトリック・イコライザー(パライコ)です。

「パラメトリック」というのは、「パラメータ(parameter)」の形容詞で、「変数的な」という意味を持ちます。「変数」というのは、シーンによって値が変化するという意味です。
グライコよりも、バンド数が少なく3〜4バンドのものが主流です。(ベース、ミッド、トレブルの3バンド、ミッドがハイミッド、ローミッドに分かれる4バンド)

※ 今回、動画で紹介しているエンプレスのPara EQは、上級者向けのパライコです。

パライコのメリット

①直感的な操作ができる

「今、俺は、500Hzをブーストしている……!」というような具体的な数値がわからない反面、自由に自分が「ここだ!」と思えるところをブーストorカットができるのがパライコのいいところ。

上級者向けのPara EQも、音量を決めるツマミは3箇所(3バンド)だけしかありません。TECH 21のQ stripのように、4バンド(ベース、ミッド1、ミッド2、トレブル)のものもあります。

②比較的コンパクトになる

グライコはバンドが多く、ツマミが増えると、その分エフェクターのサイズ感が大きくなることは避けられません。

「パライコの高性能化」と「グライコのコンパクト化」によって、ペダル型のイコライザーに関しては、あまりサイズ感に差はなくなっています。

③数値に縛られない「耳による音作り」が行える

「この音域こんなに上げたらおかしくないかな?」というように「数字に惑わされる」不安感がなく、また数字の持つ先入観を持たずに音作りをすることができます。

④フリーケンシー(周波数)やQを使いこなすことで全く違う細かい調整ができる

グライコの方が、ツマミもたくさん並んでいるので、一見細かい設定ができるように思えますが、実際に本当の意味で、細かい設定が可能なのがパライコなのです。

グライコでは、1つのツマミごとに、500、1KHz……と設定できる周波数が固定されていますが、パライコは500〜1KHzの間の“どこか”というように自由にブーストorカットしたい周波数を選択することができます。

「Q」という、帯域をブーストorカットする「山の幅」を設定するツマミがついていることもあります。例えば、500Hzをブーストする、というときに、500Hzの音量だけをピンポイントに跳ね上げているわけではなく、その周辺(帯域)もなだらかにブーストがかかるようになっています。ブーストorカットする周辺音域を広くするか、狭くするかという設定ですね。

【マニアな話】
・ピーキングタイプ:
決められた周波数を“中心”として、その周辺の帯域をブーストorカットする・シェルビングタイプ:
決められた周波数を“境に”、それより上や下の周波数をブーストorカットする

パライコのデメリット

①グライコ以上に細かく設定できる機種の場合、操作がかなり難しい

今回の動画では、ベース本体にあるのトーン・ボリュームのようなタイプもパライコの仲間に入れて、紹介していますが、本来のガチなパライコは、自由度が高すぎるので、それを使いこなす耳が求められます。

エフェクター初心者が選ぶイコライザーのポイントまとめ

さて、最後にイコライザーを選ぶためのポイントをまとめていきましょう。

  • とにかく直感的に使ってみたい→パライコ
    (ベースやアンプ、プリアンプなどシンプルなもの)
  • 周波数の数値を理解して覚えたい→グライコ

フリーケンシーやQが設定できるガチのパライコは、グライコでしっかり耳を育ててからのほうが、楽しく音作りができるのではないかなと思います。

いちばん重要なことは、いろいろと試して、違いを耳で聞いていくこと、そうして耳の経験値を貯めていくことです。

ぜひ、この記事を参考に自分の理想の音作りを支える「イコライザー」を探してみてくださいね!

 

今回登場するイコライザー

プリアンプ

厳密には、「イコライザー」ではないですが、下記のガチのパライコほどに難しくないイコライザーがついているので、直感的に操作するのに向いています。

イコライザーを買う前に練習として、まずはプリアンプでの音作りを練習するのもありです。

 

SANSAMP BASS DRIVER DI

邦楽ロックといえば、これが定番中の定番サウンド!ドンシャリで歪も強くバキバキなサウンドが強み。ただ、そんなに過激な設定にしなくても、チューブアンプを通したような温かい音色を生み出すので、1ベーシストに1台は欲しい一品です。

 

パラメトリックイコライザー

empress effects ParaEq

ペダル型パラメトリックイコライザーの最上級モデル。これを超えるペダル型のパラメトリックイコライザーは今の所ありません。

高音質で、音色を辺に加工することなく、気持ちよく周波数をいじれる上に、その調整幅がかなり広いので、使いこなすのは難しいです。

しかし、かなり幅広く使える最高級の代物です。

 

TECH 21 QStrip

これは亜種です。イコライザーともいい切れない機種です。というのもこの機種は往年のヴィンテージサウンドを再現する目的で作られているので、「つなぐだけで音が変わります。」

なので、純粋なイコライザーとはちょっと違いますが、パライコとしての役割を理解しつつ音作りを堪能したい方にはおすすめです!

 

グラフィックイコライザー

MXR ten band eq

このグライコはベース専用というわけではないので、広く無難な帯域を持っています。動画での説明であったように、中域のオイシイところを狙ってブーストカットができないのは、結構痛いところです。ただし、10バンドはペダル型では最も多いバンド数を誇るのはたしかです。

※個人的な感想として、18Vという通常のアダプターではない電源での駆動と、眩しすぎるLEDがちょっと厄介です。

 

BOSS BASS Equalizer GEB-7

こちらは動画内でおすすめしているグライコです。7バンドしかありませんが、その全てが「ベーシストにとってオイシイ」周波数なので、実践的です。

正直MXRよりもこちらをおすすめします。値段もMXRよりもお求めやすいです…