「コンプって難しそう……使いこなせるかな〜」
コンプに限らず、エフェクター用語ってカタカナ専門用語で溢れていて、心のシャッターがガッチリ閉まっている方も多いかと思います。
今回は、そんなエフェクター初心者の方でも、「意外と難しくないんだな〜」と思っていただけるように、わかりやすくコンプを理解するために必要な5つの用語についてお話していきます。
こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!
そもそもコンプの役割とは?
コンプレッサーは、「compress(圧縮する)」という言葉から由来する通り、「音を圧縮する機械」です。
「圧縮する」と言っても、おそらく多くの人がイメージできるのは、布団圧縮機くらいでしょう。ふっくらした布団をぺちゃんこに潰すアレです。
エフェクターのコンプレッサーは、「出過ぎた音をぺちゃんこにして小さくする」という役割を持っています。
「音を小さくする」とは言っても、コンプレッサーは、全体の音量を変えるのではなく、一部の大きすぎた音の部分のみに反応して小さくするという賢い機材。
コンプを使うことで、どんなことができるようになるのか? というと……
- 音の粒が揃う
- 音圧が上がる
- アタックを強調する
などなど、設定次第で、使い方も変わってくるのです。
今回は、あなたがそんなコンプマスターになるためのまず第一歩目として知っておきたいコンプの基礎、
- スレッショルド
- レシオ
- アタックタイム
- リリースタイム
- ニー
これら5つの用語をわかりやすく解説していきます。
スレッショルド:コンプのかかるラインを決める
「スレッショルド」は、どのくらいの音量を超えたら圧縮するのか、コンプのかかるラインを決める機能です。
まずは、この用語から説明していきましょう。
例えば、音量が0〜200というレベルで出るとします。(本来は、音量はdBという単位で表しますが、今回は数値的にわかりやすくするために使いません)
通常は、70〜80くらいのレベルの音量が出ますが、強く弾いたときに100以上のレベルを超えてしまうという状況を仮定して考えていきましょう。
ここで、スレッショルドを「100」と設定したとき、「100」という数値を超えた音のみを圧縮するように機能します。これがコンプのかかるラインを決める、という意味です。
コンプがかかるライン(スレッショルド)を下げて、「50」という数値にすれば、より小さい音から圧縮がかかるようになり、
逆にラインを上げて「125」という数値にすれば、より突発的に出過ぎたような音のみを圧縮して小さくすることができます。
レシオ:押さえ込み力=圧縮率を決める
「スレッショルド」では、圧縮をかけるラインを決めましたが、どのくらいの力で音を押さえ込むか、その圧縮率を決めるのが「レシオ」です。
「音を圧縮する」ということを「叩く」と言ったりもしますので、ここではハンマーで音を叩く感じを想像してみましょう。ハンマーで強く釘を叩けば、より深く刺さります。そんなハンマーで叩く強さが「レシオ」というイメージです。
レシオは、2:1や4:1などの比で表されます。
「2:1」であれば、スレッショルドを超えた音を1/2(半分)にする、「4:1」であれば、1/4にします。レシオの数字が大きくなるほど、叩く力が増し、圧縮率は高くなります。
どんなふうに音が変化するのか、簡単に図解すると……
スレッショルドを「100」、レシオ「2:1」のとき、出過ぎた音量は「120→110」「150→125」「200→150」というように圧縮され小さくなります。
ポイントは、スレッショルド100なので、120の音は、120−100の「20」が半分になるので
(120−100)÷2+100=110
ということです。これを言葉で表すと
ということですね。
では、レシオの数値が大きくなるとどうなるのか?
レシオ「10:1」のとき、「120→102」「150→105」「200→110」という具合に、スレッショルドを超えた音はほとんど同じような音量に圧縮されます。
設定次第では、やりすぎると不自然な音になったり、逆に引っ込んで聞こえたりしてしまう場合もあります。
コンプを使うと音圧が上がる?
「音圧」という言葉も、よく聞くけどわからずになんとなく使っている人もいるでしょう。簡単に言えば、「水圧」の音バージョンですね。水鉄砲を当てられるよりも、バケツを引っくり返したほうが思わずよろけてしまうくらいの力が襲ってきますよね。
簡単に、ライブハウスの大音量でビリビリと体を揺らされる感じ、だと考えても良いでしょう。
さて、ではコンプと音圧の関係の話に戻ります。コンプによって、出過ぎる音だけを押さえることで、更に全体の音量を上げることができるようになります。一部分のみが出過ぎている音源をそのままボリュームを上げてしまうと、大きすぎる部分が「音割れ」の原因になります。
小さい部分の音もパワーアップすることで、全体の音圧が上がる、という仕組みです。
コンプとリミッターの違いとは?
「リミッター」は、コンプレッサーの使い方の一部です。
レシオを最大に設定することによって、決められたラインを超えないようにすることができます。「リミット」という言葉からもなんとなく想像できますね。レシオ最大の表記は、「∞:1」という風に表したりします。
この後、お話する「アタックタイム」も、コンプをリミッターとして使うためには、重要な役割を担います。
リミッターってどんなときに使うのか? というお話ですが、これは「音割れを防ぐ」という目的が大きいです。なので、音作りとしてコンプを使う場合とは、また別の使い方となります。
アタックタイム:圧縮を始めるまでの時間
5つの用語、3つめ! 中間地点です!
少しおさらいをすると「スレッショルド」でコンプのかかる音量のラインを決め、「レシオ」でどれくらいの圧縮率にするか、を決めました。コンプにはまだまだ細かい圧縮設定が可能です。
「アタックタイム」は、ラインを超えた音を圧縮し始めるまでの時間を差します。つまり、スレッショルドのラインを超えたらすぐに叩き潰すのか、それとも少し経ってからのんびりと叩き始めるのか、を決めることができます。
ベースの音は、ピックや指で弾いたとき、つまりアタックしたときの音が一番大きくなります。そして、弦の振動の減衰とともに、小さくなり消えていきます。
アタックタイムを速く設定すれば、音量のピークを検知して、すぐに音を下げ、逆に遅く設定すれば、アタック音の一番大きなところは潰さずにその後に伸びる音を押さえる、ということも可能です。
先程まで、コンプは音量のピークはとにかく叩いて叩いて潰しまくる! というイメージがあったかと思いますが、実は、本当に大きなところ(アタック音)を残して強調する、ということもコンプでできるのです。この設定は、パーカッシブな演奏、つまりスラップなどにはとても向いています。
コンプを「どんな用途で使いたいのか」によって、アタックタイムの設定は大きく変わってきます。
リリースタイム:圧縮の止め時を決める
アタックタイムは、圧縮を始める時間を決めるものでしたが、今度は逆に圧縮を止める時間を決める「リリースタイム」です。叩いていた音を開放する時間という感じですね。
音が圧縮され、やがてスレッショルドを下回ると、コンプ制御から開放されるわけですが、そのスレッショルドを下回ってからどのくらいのスピードで開放するのかを決めます。
早すぎると、音量が不自然に変化して、違和感のあるサウンドになってしまうこともあります。逆に遅すぎると、全体的に音量が下がってしまう、という可能性があり、上手に音の変化を理解しながら、設定していく必要があります。
ニー:コンプのいきなり具合
お疲れさまです。いよいよ、5つ目の用語「ニー」の解説です。
「ニー」というのは、英語で「膝」を表す言葉ですね。「ニーハイ」とかの「ニー」です。
コンプを「どんな具合にかけるのか」を指す言葉で、いきなりグンっと音を下げる設定を「ハードニー」、かかり始めを緩やかにする設定を「ソフトニー」と呼びます。ハードとソフトで選ぶわけではなく、数値で調整していきます。
足元に置くペダル型のコンプレッサーでは、ニーは固定で設定できないものが多いです。ですので、その辺は好みで機種を選ぶ、ということになりますね。
コンプによっても、設定できる幅が違う!
5つの用語を説明してきましたが、「そんなに自分の持っているコンプには、ツマミがないぞ!?」と思われた方も多いでしょう。
ものによっては、アタックタイム・リリースタイムなどが固定値で決まっていて、ツマミで自由設定できないこともあります。
ベース専用のコンプレッサーはベースの音の特徴を理解して作られているのでアタックタイムとリリースタイムは予め
「ベースの音に最適な値」に設定されているということです。
細かい設定ができるということは、逆に自由度が高すぎで、設定が難しくなります。多機能であればいいかというと、扱いきれずに持て余してしまう、最悪使えないことにもなりかねません。
用途や自分のレベルに合わせて、最適なコンプレッサーを選んでいきましょう。
初級:EBS/マルチコンプ
ベース用コンプの定番機とも言えるEBSのマルチコンプは、2つのツマミのみ。設定の難しいアタックタイム、リリースタイムなどは、すでに適切な数値でプリセットされているのです。自由度は低くなりますが、操作はとても簡単です。
※TUBE SIMモードは心地よく音がリッチに(中低音が太く)なります。この音を気に入って愛用している人も多いです。
高音質と高性能を両立させたアナログコンプレッサーペダル。真空管コンプのサウンドを再現したチューブシミュレーション、高/低音域それぞれ分けてコンプをかけることができるマルチバンド、ノーマルと、3つのモードが選択できる。ベース用コンプの定番です。
メーカー | EBS |
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種類 | ダイナミクス系:コンプレッサー |
▼正統進化した現行品はこちら▼
ベース界の定番エフェクター、EBS マルチコンプが正統進化し新登場。
ブルーラベルとなり先代機種Studio Editionで好評だった基本性能は準拠しながらも各部をアップグレード。
Sens.(Threshold)コントロールが追加され、コンプレッションの効き具合により細やかなセッティングが可能になっています。
またヘッドルームにさらなる余裕を生む電源電圧の18V対応(製品自体は9V以上で使用可能)など、クォリティーがより高めてられています。
メーカー | EBS |
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種類 | コンプレッサー |
中級:
Vivie/FenneComp
アタックを強調する使い方がしたいな……という方は、アタックタイムが操作可能な物を選ぶ必要があります。
今回ご紹介するのは、国産メーカーVivieのFenneComp(フェネコンプ)。これもベース専用のコンプレッサーです。
アタックタイム・リリースタイムを切り替えるスイッチが付いていて、アタックを強調する使い方にも使えますし、ピークを叩いて音の粒を揃える、という使い方もできます。
※使ってみたところ、「Vivie独特の音質補正がある」「5弦ベースでの重低音への効きがいびつ」という感じで個人的には使いづらく感じて今は使わないです。
FenneCompはコンプレッサーを使ったことのないビギナーにも非常に扱いやすいシンプルで直感的なコントロールと、高音質を両立させたベース用コンプレッサーエフェクターです。
メーカー | Vivie |
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種類 | コンプレッサー |
というわけで、こちらのコンプはかなり癖があるので、癖のない万能選手をご紹介します。
BOSS /BC-1X
ボス インテリジェントなマルチバンド・コンプレッサー
ベースの原音のキャラクターを維持したまま反応
スタジオ・クラスのマルチバンド・コンプレッサーに匹敵する内部処理
シンプルな4つのつまみ操作
18Vに内部昇圧された充分なヘッドルーム
メーカー | BOSS |
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種類 | コンプレッサー |
上級:
empress/compressor
さらにさらに細かい設定が可能なのが、empress(エンプレス)のcompressor(コンプレッサー)です。
スタジオ・コンプレッサー同様のフル・コントロールとLEDメーター。レコーディング・スタジオのラックマウント機器同様のコントロールを全て装備。Input/Ratio/Attack/Release/Outputは個別にコントロールが可能なので、あらゆる楽曲に対して最適なコンプレッションを追い込めます。レコーディング・スタジオでの作業と同じく、微妙なダイナミクスまでをもパーフェクトにコントロールできます。
メーカー | Empress Effects |
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種類 | コンプレッサー |
これは、ベース専用のコンプレッサーではありませんが、かなり細かい設定が可能なので、ベースにも使うことができます。
繰り返しになりますが、「高機能の方が、将来色々な用途で使いたくなったときに、大は小を兼ねるっしょ」と安易に高機能のエフェクターを選ぶのは危険です。各ツマミによって得られる効果を耳で判断する能力が必要だからです。
その点を含めても、
- 自分は幅広い音作りに挑戦したい
- 今持っているコンプに不満がある
というようであれば、多機能コンプを選ぶのが良いと思います。
↓最近はこのempressのコンプレッサーは市場で見かけないので、こちらをおすすめします。
Darkglass HYPER LUMINAL
メーカー | Darkglass Electronics |
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種類 | コンプレッサー |
コンプを使いこなすための5つの用語まとめ
最後に、コンプを使いこなすための5つの用語について簡単にまとめましょう。
- スレッショルド:コンプのかかるラインを決める
- レシオ:押さえ込み力=圧縮率を決める
- アタックタイム:圧縮を始めるまでの時間
- リリースタイム:圧縮の止め時を決める
- ニー:コンプのいきなり具合
聞き慣れない言葉だと思うので、すぐには覚えれないかもしれません。使いながら徐々に覚えていきましょう!
コンプは、自分がどういう音を作りたいのかによって、使い方が大きく変わるエフェクターです。厳密には、1曲ごとに変えたり、プレイスタイルによって変えたり、積極的に音作りしていくために使われることもあります。
ぜひ今回の用語を覚え、使いこなし、楽しく音作りをしていきましょう!
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