【音作り例】SANSAMP vs MXR3つの違い|サンズアンプv2とMXR M80 BASS D I +ベースエフェクター比較レビュー

今回は、ベースの音作りで話題にされがちなプリアンプの大定番の2機「MXR M80 Bass D.I.+」「SANSAMP BASS DRIVER DI V2」の違いについて解説していきます。

エフェクター初心者の方でも、この2機はよく聞く名前かと思います。

「買ってみようと思うけど、どっちがいいのかな?」と疑問に思う方も多いですが、今回は「どっちがいいの?」という優劣をつけるわけではなく、この2つの機種にどんなキャラクターの違いがあって、どう選べばいいのかという視点でお話していきます。

大きさや重さなどの単純な違いから、音色のキャラクター的な違いまで、とことん違いを見ていきましょう!

こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!

大きさ・重さ・見た目の違い

「大きさ、重さなんて関係ある?」と思われるかもしれませんが、意外とエフェクターボードを組む上では、ここもある意味重要なポイントかもしれません。

とは言っても、「MXR M80 Bass D.I.+」(以下、M80)と「SANSAMP BASS DRIVER DI V2」(以下、サンズ)の大きさはほぼ同じ

ただし重さは、

  • M80:711g
  • サンズ:360g

と、M80が約2倍重いです。

エフェクターボードを手で持ち歩く場合は、重さも意外と気にするポイントです。

インプットとアウトプットは、まるで同じ位置にあり、どちらもパラレルアウトがついています。

パラレルアウトは、エフェクターからのエフェクトをかけずに別のエフェクターなどに分岐させるために使います。チューナーを直列につなぎたくない人はここにチューナーを繋いだりもします。

M80とサンズは、どちらもDI(ダイレクトボックス)としての機能を持っているので、XLR端子がついています。

DIは、アンバランスな信号(ベースから送られる信号)をバランスに変換する機能のことを言います。

機能の違い

サンズには、デフォルトの音量を調整するスイッチが付いています。
例えば、アクティブ・ベースとパッシブ・ベースでは、エフェクターへ入力される音量に差があります。そうした入力の音量差によって、ノイズが大きくなりやすかったり、あるいは意図せずに音が歪んでしまうことがあります。
そうした問題を防ぐことができるのがサンズですが、バンドで足元において使う分には、そこまで「このスイッチがないとダメなんだ〜」と気にしなくてもいい差かなと思います。

音色のキャラクターの違い

定番機として上げられる2台ですが、音のキャラクターは全く異なります。
なので、好みでどちらかを選んでもいいし、用途に合わせて使い分けるということもできます。
では、どんなキャラクターの“違い”があるのか? という“違い”にフォーカスして3点お話していきます。
M80、サンズそれぞれを詳しく解説した記事もあるので、どちらか気になった方があれば、ぜひそちらの記事も読んでみてくださいね!

【目で見る音作り】MXR M80 BASS D.I.+ 機材レビュー!ディストーションの意外な使い方

【図解:セッティング例】サンズアンプベースドライバーV2レビュー<音作り・使い方・つなぎ方>

サンズとM80の3つの“違い”

私が思うサンズとM80の違いを3つにまとめると……

  1. スイッチ(チャンネル)の違い
  2. イコライザーのキャラクターの違い
  3. 歪みの種類の違い

これら3点について解説していきます!

①スイッチ(チャンネル)の違い

サンズは1チャンネルでオン/オフによる音色の変化のみですが、M80はクリーンチャンネルとディストーションチャンネルの2チャンネル持っているため、サンズとは少し使い方が異なります。

またM80には、クリーンの音色を変えるカラースイッチがついています。これは演奏中に切り替えることには向いていませんが、音色のキャラクターを変えるという意味ではバリエーションを持っているのがM80です。

チャンネルの切り替えを踏まえて、一言で説明するのであれば……

サンズは、「オレかオレ以外か」

M80は、「裏の顔を持つ優等生」

サンズは「オレかオレ以外か」

某ホストの帝王様の名言ですが、まさにそんな濃いキャラクターを持ったサンズをオンするか、それともオフで使うのか。スイッチひとつで、「まさにサンズ!」という音色になってしまうことから、「オレかオレ以外か」という使い方になるのではないかなと思います。

どう特徴的かというと、サンズはまずフラットの状態(EQが12時、ゲイン0の状態)でもドンシャリサウンドになります。

「ドンシャリ」とは、中音域がカットされ、低音域・高音域が出ている状態。中音域のふくよかな感じがなくなり、勢いや鋭さのあるサウンドになります。呼び名の通り、「ドンシャリ」という感じがあります。

サンズの使い方としては、踏みっぱなしで基本の音作りとして使う場合もありますし、スラップのときだけ、前に出るようなサウンドにするためにオンする、という方法もあります。

M80は、「裏の顔を持つ優等生」

2チャンネルのうちのクリーンチャンネルでは、あまり個性を変えすぎずにクリーンの音作ることができるM80は、まさに優等生、といった感じ。

加えて、M80はカラースイッチのスイッチひとつでドンシャリサウンドになるというのもスグレモノ。

使い方としては、クリーンをオンしたまま、シーンによってディストーションチャンネルのオン/オフの切り替えをするという方法が多いかなと思います。

ディストーションチャンネルでは、かなり歪んだ極悪サウンドを作ることができるので、「裏の顔を持つ優等生」という感想です(^^)

ドンシャリならば、同じなの?

「M80もカラースイッチを入れれば、サンズと同じドンシャリサウンドがつくれるの?」

こんな疑問を持つ方もいると思います。

答えを言うと、

ドンシャリという特徴は同じだが、別の特徴がある!
同じ深煎りの苦いコーヒーでも、Aはコクが強い、Bは酸味が強い……というような感じで、サンズとM80はどちらもドンシャリというくくりでは、似た特徴をもつ音を作ることができますが、もっと微妙なニュアンスのところで別の特徴を持っています。
私個人の感想ですが、サンズのほうが「太い」、M80の方が「重い」というニュアンスがあると思います。
サンズは、暖かなチューブアンプ感があるために太いという感じ、M80はそのままのベースの音をドンシャリにしているため重いという感じがするのではないかなと考えています。

②イコライザーのキャラクターの違い

イコライザー(EQ)というのは、全体の音量ではなく、高音域・中音域・低音域などの音域ごとの音量を調整します。

サンズもM80も、ベース・ミッド・トレブルというように3つの周波数帯域に分けられ、調整できるようになっています。(3つの帯域に分かれるものを3バンドとも呼びます。)

サンズには、プレゼンス(超高音域)もコントロールできるようになっています。これは、主に音を歪ませたときに効果を発揮します。

同じようにベース・ミッド・トレブルというツマミがあっても、どのあたりの周波数を中心に音が変化するかは、メーカーによって異なります。

M80は、1つのツマミ(EQ)で影響を与える幅が広く(山が広い)、サンズは、よりピンポイントに調整する帯域が変化する(山が狭い)という印象です。

M80の音色の変化

一つずつEQの効き方を見ていきましょう。

M80のベースをMAXにすると、60Hzあたりがブーストされることがわかります。

ミッドは、800Hzを中心として広範囲にブーストされるようです。波形が全体的に持ち上がったような形になりました。

トレブルは、4KHzを中心として、それ以上のもっと高い音もぐっと引き上がっているのが分かります。

サンズの音色の変化

サンズは、M80と同じようにベース・ミッド・トレブルというツマミにはなっていますが、ベースが40/80Hz、ミドルが500/1KHzと、どのあたり周波数帯域をコントロールするかが選択できるようになっています。

5弦ベースではより重低音が鳴るので、それに合わせて低音域の出方をコントロールしていきます。そういったベースのタイプの違い、また個性の違いに合わせて、40/80Hzどちらにするかを選択していきます。

ミッドも500/1KHzで選択することができますが、ミッドの選択は音のキャラクターを大きく左右していきます。

500Hzを選択してブーストしてみると、サンズは元々がドンシャリですが、音に太さ、丸みが出て、体を押し出すような主張のある音になります。

ミッドを1KHzに選択してブーストしてみると、今度はドンシャリのシャリ感が強まったように感じますね。

次にトレブルです。トレブルは、ベース・ミドルのように選択はできません。

トレブルをブーストすると2K〜4KHzあたりが上がりました。M80と比べて、この“上がり方”がピンポイントで狭い印象ですね。

ドンシャリのシャリ感が強まって、ジャリっとしたアタック音が混ざってきます。

EQの効き具合の違いまとめ

<サンズの特徴>

  • ミッドとベースでコントロールできる周波数が選択できる
  • ピンポイントに鋭利な山で周波数が変化する

<M80の特徴>

  • シンプルな3バンド
  • 広範囲に(広い山のように)周波数が変化する

③歪みの種類の違い

「歪む」と一言で言っても、その歪み具合や歪み方は、多種多様です。(これが俗に言う“沼”)

歪み方を言葉で表すならば……

サンズの歪みは、

  • ゴリゴリ
  • オーバードライブ的な歪み

M80の歪みは、

  • シャリシャリ(ジャリジャリ)
  • ディストーション的な歪み

という感じです。

「オーバードライブ」と「ディストーション」は、歪み加減によって呼び方が変わりますが、明確な線引はありません。ディストーションの方がより激しい歪みを指します。

M80の歪み

クリーンチャンネルでは、優等生ぶっていたM80もここで牙を向きます。

MAXで歪みをかけると、まるでギターのサウンドのような感じで、ショワーッと空間を埋め尽くすように歪みがかかります。

歪ませすぎると、低音感が弱くなってしまうので、ブレンドで原音とミックスしていくことで、芯を残した歪の音を作ることができます。

サンズの歪み

サンズは、ドライブを上げると同時にレベル(音量)も調整します。

サンズは、チューブ感のあるプリアンプなので、歪みもチューブアンプで音量を上げたときのような感じで歪みます。言葉で表すと、「ゴリゴリ」いう感じで、音の太さ、芯を感じながら歪む感じがありますね。

サンズでは、M80になかったプレゼンス(超高音域)を調整できます。これが活躍するときが来ました!

歪ませたときにプレゼンスを上げることで、よりシャリッとした音が加わり、激しく歪んだようなサウンドになります。

プレゼンスを上げても、サンズの方は8KHz以上の音がぱったり出ていないのに対し、M80の方は8KHz以上の音が出ていることが分かりますね。この8KHz以上の高い音が入っているのがシャリシャリとした印象を作っている、ということが考えられますね!

どう歪みを使い分ける?

あくまでも使い方の一つとしてのお話ですが、

サンズは、アンプで作る歪みのように原音をゴリゴリとした印象に変える音作りに。

M80は、曲調的にディストーションとしてのサウンドを使いたい・飛び道具的に音を激変させたい場合に。

という感じに使っていくことができるのではないかなと思います。

ぜひ、あなた流の使い方も見つけてみてくださいね!

音作り例・デモ演奏

▼デモ演奏:27:03〜

では、サンズとM80の使い方として最後に、4つの音作り例を紹介していきます。

どちらもクリーン系と歪み系の2つずつ音作りをしてみました。

セッティングも載せていますが、この通りに回しても同じになるわけではないので、ある程度のポイントもまとめました!

是非参考に音作りをしてみてくださいね!

まとめ:サンズvsMXR M80どう選ぶ?

ベースのペダル型プリアンプ二大巨頭「SANSAMP」と「MXR M80」を比べてきましたが、自分の好みのサウンド、作りたいサウンドは見えてきましたか?

今回お話したサンズとM80の違い3点をまとめると

  1. スイッチ(チャンネル)の違い
  2. イコライザーのキャラクターの違い
  3. 歪みの種類の違い

同じようなドンシャリ系のサウンドがつくれるサンズとM80ですが、全く違うキャラクターがあることが分かりましたね!

どっちが良い・悪いで決めるのではなく、どちらのほうが自分のやりたいことに向いているのか

ぜひ、この視点でベストな音作りを考えてみてくださいね!

おまけ:実験環境

おまけで、最後に実験環境についてお話します。

今回動画の収録直前に、サンズがまさかの故障という自体になってしまったので、急遽もう一台用意しました。イケベ限定カラーで色は違いますが、性能は全く同じです。
今回はラインセレクターを使って、ベースからサンズとM80へ直列ではなく、切り替えて音を比べていきます。
また、音色の違いは耳で感じるのが一番なのですが、とは言っても違いを感じるのが能力的・再生環境的に難しいということを考慮して、「目で見る」シリーズとして、今回も音の周波数が見られるスペクトラム・アナライザーを使っていきます。
小さくて見えづらいかもしれませんが、青い棒の上に黄色い横線がついていますね。その黄色い線まで、最大で出ましたよ、という見方になります。
ベースと言うと“低音楽器”と呼ばれることから、低音域だけを司っていると思われがちですが、意外と高い音域の揺れ(倍音)が出ています。
この周波数(倍音)の出方の違いで、音色の違いが生まれます。感覚的な違いが、全て波形で分かるわけではありませんが、違いを捉える補助輪として、楽しんでいただけたらと思います。