新マルチコンプ“ブルーラベル”と“スタジオエディション”の3つの違い

ベーシストの定番コンプレッサー、EBSのマルチコンプがグレードアップし、ブルーラベルシリーズとして2019年12月に発売開始されました!(前機種であるスタジオ・エディションは、すでに生産完了しています)

そんな新シリーズ・ブルーラベルは、旧モデルのスタジオ・エディションとどこが変わっているのか? その特徴を今回は解説していきます。

こんにちは、ベースライン研究所所長のたぺです。当研究所(サイト)にお越しいただきありがとうございます!ここを訪れてくれたあなたも既にベースをこよなく愛する研究員。共にかっこいいベースライン作りの研究をしていきましょう!

▼旧モデル:スタジオ・エディションについては、こちらもご覧ください!

マルチコンプ3つの魅力と使い方【EBS MULTICOMP Studio Edition】

ブルーラベルとスタジオエディション大きな違い

まず、見た目な違いは以下の通り

  • つまみが2つから3つに増えた
  • サイズがスリムになった(専有面積12%削減)
  • サイドのジャックの出っ張りが改善された

機能的な違いだけでなく、よりコンパクトにエフェクターボードに収納できるようになったというのは、嬉しいアップデートですね!

「音はどう?」というのが一番気になる部分かと思いますが、「正統進化」とも呼ばれるほどに、キャラクターは変わらず、今までのスタジオ・エディションの良いところを受け継いでいます。加えて設定の自由度が広がり、アップグレードしたという印象です。

今回の記事では、性能のアップグレードによる音質の変化を

  1. 18V対応になったことによる音質の変化
  2. SENS.のツマミによる音作りの変化
  3. マイナーチェンジしたMB

3つに分けて、解説していきます。

18V対応になったことによる音質の変化

ブルーラベルでの大きな進化の一つが18V対応になった点です。(9Vで使うことも出来ます)

基本的にエフェクターは、9Vで動くものが主流で、パワーサプライも9V対応のものが多いです。今回のブルーラベルのように18Vで動くものもあるので、電源をつなぐ際にはよく確認してつなぎましょう。

この“電圧の違い”は、故障の原因や本来の力を発揮できない問題につながりますので、どちらの電圧対応のものかよく確認して接続してください。どんなエフェクターでも18Vでつなげば音が変わるという意味ではありませんので、ご注意ください。
18Vの電源アダプター▼

マルチコンプの9V駆動と18V駆動でどんな変化が起こるのか? これを一言でいうと、

音がクリアになります。

なぜ18V駆動のほうが、音がクリアになったという印象を得られるのか、というお話ですが、電圧が上がることにより「ヘッドルームが広くなる」という変化が起こります。

ヘッドルームという単語が初耳! という方も多いと思うので、説明しましょう。

ヘッドルームとは

ヘッドルームとは、簡単に言えば

音割れまでのゾーン
を差します。
部屋の天井が高いのか、低いのかというように音割れライン(天井)が高くなると、ヘッドルームが広いという風に表現します。
ヘッドルームが広いと、
  • 音割れしにくい
  • 音がクリアになる

という変化が起きます。

なぜこんな変化が起こるのか、ということは画像の解像度をイメージすると理解しやすいでしょう。

解像度が低い画像でも、サイズが小さい分には気になりませんが、大きく引き伸ばしたときに、画像の粗さが露呈する。というような現象が“音質”でも同じことが起こるということです。

実験1:スタジオエディション(9V)vsブルーラベル(18V)

動画5:51〜より実際の音の変化を聞いてみましょう!

スタジオ・エディション、ブルーラベルともにコンプ0、ゲイン0の状態でチューブシミュレーションモードで比較します。(ブルーラベルのSENS.は12時の方向で、スタジオ・エディションとほぼ同じ状態をつくれるので、この設定にしています)

まずマルチコンプを通さない音とスタジオ・エディションでの違いは、ハイミッドがブーストされ、音に丸みが出たような印象がありますね。

9Vにしか対応していないスタジオ・エディションと18Vにつないだブルーラベルでは、音がクリアになり、少しブライトになった感じがしますね。

動画での音声は、再生環境によっても少し感じ方が変わってしまうので、今回は、もっとわかりやすい環境で、ヘッドルームが広くなっているということを体感していただきましょう!

実験2:過大入力の音量をそれぞれに流してみる

通常使用する際は、コンプの前で音量を上げすぎるような設定はしないですが、今回はあえて実験的に、より大きな音量にブーストして入力したときの2台の音の変化を見ていきましょう。

今回は動画でも音の変化、ヘッドルームの変化を感じていただくために実験的にやるもので、この使い方を推奨するものではありません。エフェクターや機材に負担になり、故障の原因になることもありえるので、良い子は真似しないでね!
今回、ブースター代わりに使っているのが、empress(エンプレス)のParaEq(パライ―キュー)。このエフェクターでは、音質をほとんど変化させずに、音量のみを上げることが可能です。
歪ませるためのエフェクターではありませんが、音量が大きくなっているため、音割れして歪んだように聞こえます。
スタジオ・エディションとブルーラベルの設定は、コンプをMaxに。コンプをかけた分の音量を調整するためにゲインも少し上げておきます。
大きすぎる入力(音量)をコンプによってつぶすため、歪んだように聞こえますが、スタジオ・エディションよりもブルーラベルの方が少し歪みがやさしい感じがしますね。
スタジオ・エディションの方は、音がブヨブヨ、モコモコとして音の輪郭が保てていない悪どいような音になっていますが、ブルーラベルでは、モコモコ感も少なく音の輪郭は比較的保てているように聞こえますね。

実験3:ブルーラベルを9Vでつなぐとヘッドルームは広くならない?

「ブルーラベルを9Vで動かすとどうなるのか?」というのも気になるところですよね(^^)

わかりやすく変化を見るために、実験2同様、過大入力の条件下で、音質の変化を聞いていきましょう。

  1. スタジオ・エディション(9V)
  2. ブルーラベル(9V)
  3. ブルーラベル(18V)

ブルーラベルの9V駆動は、やはり18Vで動かした場合よりも、ヘッドルームが狭くなり、歪み(音割れ)がひどくなってしまいました。

スタジオ・エディションと比べると、同じくらいに歪んでしまってはいますが、音の輪郭はブルーラベルの方が少しくっきりしているような感じがありますね。

18Vで使うのがオススメ!

今回はヘッドルームが広くなっているということを確かめるために、実験的に、あえてコンプの前に音量を上げる(過大入力)という条件下で聞いてみました。

通常のセッティングでは、こんな状態にはならないので、好きな方で使うのが良いと思いますが、音がクリアになり、抜けが良くなるという印象があるので、18Vで使うのをオススメします。

つなぎ方として、ベースからまずコンプにつなぐ、という使い方が一般的ですが、歪みエフェクターなどをつないだあとの最後の方に音色の調整としてつなぐ、という場合は、入力音量は上がった状態になっているので、ヘッドルームが広い18Vの方が音質を損ねづらい印象です。

おまけ:ブルーラベルの箱が……

余談ですが、今回のブルーラベルの箱がとてもかっこいいな! と個人的に気に入っています(笑)

▼旧モデルはエフェクターと同じ柄

SENS.のツマミによる音作りの変化

スタジオ・エディションからブルーラベルの一番の大きな変化と言えるのが、

「SENS.」という1つツマミが増えた

ことです。

この「SENS.」で調整できるものは何か? コンプ用語でいうところの

“スレッショルド”の調整

がこのSENS.のツマミでできることです。

コンプ用語がわからない!という方は、コチラの記事も参考にしてみてくださいね!

【図解】コンプレッサーを使いこなすための5つの用語<スレッショルド・レシオ・アタックタイム・リリースタイム・ニー>

マルチコンプ3つのツマミの役割とは

マルチコンプのこの3つのツマミによって、どんな音の変化が起こっているのかわかりやすく説明していきましょう。
「SENS.」(スレッショルド)でコンプがかかるラインを決めて、その基準を超えた音の圧縮率(レシオ)を「COMP」で決めます。そして、出来上がった音の音量を「GAIN」で調整しています。これが3つのツマミの役割です。
スタジオ・エディションには、このSENS.コントロールがなく、スレッショルドの設定は、パッシブ・アクティブの切り替えスイッチの2モードで固定でした。なので、まったくスレッショルドが変えられないわけではありません。
18Vの電圧に対応するにあたり、対応できる入力(音量)レベルの幅も広がり、かつスレッショルドも調整できるようになり、より幅広い音作りに対応できるようになりました。

SENS.の調整によって起こる音の変化

スレッショルド(SENS.)が変わると、音にはどんな変化が起こっているのか? わかりやすく図解にしました。

右に回すと、感度が増して、より小さい音にもコンプがかかるようになり、左に回せば感度が減り、より大きい音にのみかかるような設定になります。

SENS.を12時の方向に設定するとスタジオ・エディションと同じ状態になります。

動画3:46〜よりSENS.の設定による音質の変化を聞くことが出来ます。

マルチコンプは、アタック音が残るような設定のコンプです。

コンプを最大にかけると、アタック音と実音の音量に差が開き、アタック音がかなり強調されて聞こえるようになります。

SENS.を右に回していくと、コンプがかかるライン(スレッショルド)が下がり、より小さい音量レベルにコンプがかかるようになるので、全体音量も下がります。

ただしアタック音が残るような元々の個性があるので、変にパツパツとアタック音だけが残ります。下がってしまった音量を上げるためにゲインを上げると、アタック音もより目立つようなサウンドになります。

SENS.を左に回していくと、反対にコンプがかかるライン(スレッショルド)が上がるので、コンプがかからず全体の音量も上がります。(元の音量に近い音量になります)

SENS.が調整できるとどんなメリットがある?

スタジオ・エディションでは、設定できなかった「SENS.」ですが、調整できるようになったことにより、どんなメリットが生まれたのかを解説します。

ベースでは指弾き・スラップという奏法の違いにより、どうしても音量に差が生まれやすいことがあります。

すると、スラップではいい感じだったコンプが、指弾きのときはちょっと物足りない……というようなことが起こります。

そんなときに、SENS.を調整することにより、指弾きのときに使う用の音作りとして使う、ということができるようになりました。

SENS.を上げることにより、指で弾いてもタイトな音にするということが可能です。

スタジオ・エディションでは、パッシブ・アクティブの2モードだったので、全くのコンプ初心者が使うにはやさしかったかもしれませんね^^;

  • パッシブ・アクティブの違い
  • 個人の弾き方の違い
  • 奏法の違い

などに合わせて、SENS.は調整していきます。

サスティンが欲しい場合にも

マルチコンプによって得られる効果として、アタック音が強くなる他に

サスティンが伸びて、ロングトーンが出せる

という効果を得ることが出来ます。

これは、マルチコンプに限らずコンプを使うことで得られる効果の一つです。

コンプは、一定の音量を超えないようにすることと同時に、全体の音量をバランス良く底上げします。

大きな音だけを潰し、小さい音は音量を上げるという調整ができるようになっています。

ベースの音は、弦の揺れの減衰とともに小さくなっていきますが、その小さい音がコンプによって底上げされることによって、音量が増し、音が伸びるように聞こえるようになる、という仕組みです。

SENS.を上げることで、より小さな音に反応するようになり、サスティンが伸びるような設定にも出来ますが、ソフトに演奏しないとアタック音が目立ちすぎてしまうという側面もあるので、演奏しながらちょうどよいところを探していきましょう。

ブルーラベルになって、音作りの可能性が広がった!

スタジオ・エディションでは、ベースから最初につなぐエフェクターとしての使い方が主流でしたが、今回スレッショルドを設定できるようになったことで、それだけではない使い方ができるようになりました。

エフェクターをつなぐ順番に正解はないので、使い方を研究して深めていきたいですね!

マイナーチェンジしたMB

いよいよ3つ目のMB(マルチバンド)モードについて解説していきます。

マルチバンドモードは旧シリーズ:スタジオ・エディションにも存在しましたが、少し仕様が変わったので、その点をお話しましょう。

まず、マルチバンドモードとは、どんなモードなのかというと、

音域ごとにコンプのかかり具合を調整できるモード
で、全体の音量ではなく、出過ぎた低音域だけにコンプをかける、というような使い方ができるモードです。

1つの音の中に低音域から高音域までの音が出ているので、単純に音量にコンプをかけることを考えるよりも立体的になるイメージです。

音作りがより詳細になっていくので、今までの内容よりかは、少しレベルアップしますので、頑張ってついてきてくださいね!

自分の機材や好みに合わせて、微調整ができることは、音にこだわりが出てくると楽しみの一つになります。

スタジオ・エディションからブルーラベルへ。何が変わった?

さて、では旧シリーズから何が変わったのかというと

調整できるトリマーが2つから1つになった。

トリマーというのは、裏ぶたを開けたところにある隠れツマミのようなものです。(実際いじるには、プラスチック製のドライバーが必要です)

▼旧モデル:スタジオエディションのトリマー

 

裏側の隠れ機能だから、ちょっとした色つけ程度に変わるのかな? と思いきや、結構わかりやすいほどに変化します(デモ演奏は、2:42〜

左に回す(低音域コンプを強める)

メリット:適度な調整で低音がスッキリする
デメリット:やりすぎると音がスカスカになる

動画では、トリマーを左に回し、低音域のコンプを強め、なおかつSENS.を最大にしてみましたが、ぱりぱりとした薄い感じの音になりました。

右に回す(高音域コンプを強める)

メリット:適切な設定だと耳障りが良くなる
デメリット:かけすぎると音がこもる

同じようにSENS.を最大にして聞いてみると、スピーカーにふとんをかぶせたようなモワモワっとした音になりました。高音域が圧縮される(足りない)とモコモコとした音になりやすいですね。

どんなときに使うモードなの?

例えば、5弦ベースを使うときに、ローが抑え込まれすぎてしまい音が薄っぺらくなってしまうことや、反対にローが出すぎてボワボワと抜けが悪い状態になってしまうことがあります。

そんなときにこのマルチバンド機能での音域コンプの微調整がとても役に立ちます。

「えー、でもマルチバンドモードじゃないと微調整できないって、使い勝手悪いなー」

と思ったあなた、ご安心ください。

実は、この設定は、チューブ・シミュレーター・モードでも、ノーマル・モードでも影響するようになっています。

トリマーの調整についてですが、エフェクターの内側、基盤に触れる部分の調整なので、必ず”プラスチック製”のドライバーを使用します。(金属製でないものを使いましょう!私は、セラミック製のドライバーを使用しています)金属製やマグネット付きなどのドライバーを使うと故障の原因になるので、ご注意ください。

マルチコンプの魅力は、チューブサウンドにあると思うので、個人的なオススメは

チューブ・シミュレーター・モードにして、マルチバンドを調整する

というような使い方です。

マルチコンプ・ブルーラベルで起こった進化まとめ

では最後に、今回の内容をより深く理解するためにまとめていきましょう!

EBSのマルチコンプが新シリーズ:ブルーラベルになって変化した大きな3つのポイントは以下の通り。

  1. 18V対応になったことによる音質の変化
  2. SENS.のツマミによる音作りの変化
  3. マイナーチェンジしたMB

これらをまとめて、一言で言うならば

シンプルな使い勝手やチューブ・モードの良さを残しつつ、かつ音作りの柔軟性が増えた
「正統進化」という言葉がまさしくふさわしいアップデートだと思います。
ぜひ、この記事でマルチコンプが気になったという方は、試奏・購入検討されてみてはいかがでしょうか?(^^)/

おまけ:裏側開けてみた

エフェクターを開けるのは、ちょっとドキドキだなぁ……という方もいらっしゃるでしょう。ということで、マルチコンプを開けて、裏側のトリマー(マルチバンド)をいじるだけの動画も撮影しましたので、よかったら参考にしてください!

旧モデルSEは、マイナスドライバーで、新モデルのブルーラベルはプラスドライバーで調整します。

もし設定する際は、プラスチックドライバー(またはセラミックドライバー)を使いましょう。基盤の近くをいじっていくので、電気が通りやすい素材で触れてしまうと回路が壊れてしまう危険性があります。お取り扱いは慎重に、自己責任でお願いいたします。